伊藤宗印 (2代)

二代伊藤宗印

二代伊藤宗印（1655年 - 1723年）は、江戸時代の将棋指しで、将棋家元三家の一家である伊藤家二代当主、五世名人です。初代伊藤宗看の養子であり、前名は鶴田幻庵とも呼ばれていました。

経歴

肥前国唐津（現在の佐賀県唐津市）出身。幼少の頃に初代伊藤宗看に養われ、将棋の腕を磨きました。元禄2年（1689年）には、初代宗看の邸宅で五代大橋宗桂と右香落で対戦し、勝利を収めています。

元禄3年（1690年）に伊藤宗看の養子として御城将棋に出仕し、元禄4年（1691年）に養父の引退に伴い伊藤家を継承しました。しかし、名人位は大橋本家の五代大橋宗桂が就位しました。

次期名人を巡っては、大橋分家の三代大橋宗与と激しい競合関係にありました。御城将棋での宗印の対戦30譜のうち、24譜が宗与との対戦であり、元禄3年の宗与との左香落戦は『御城将棋留』に棋譜が記録された最初の対戦となっています。その対戦では敗れたものの、平手での対戦では宗与に常に勝利したとされています。

元禄11年（1698年）には長男の伊藤印達が誕生。元禄13年（1700年）には献上図式である『象戯図式』を開板しました。

宝永6年（1709年）に長男の印達が五段で御城将棋に初出勤。同年には五代宗桂の養子である六代大橋宗銀も初出勤しています。同年10月10日より、印達と宗銀が御好で対局を行うことになり、当初は十番程度で終わる予定でしたが、宝永8年（1711年）2月28日まで五十七番にも及ぶ長丁場の勝負となり、後世に「五十七番指し」と呼ばれるようになりました。最後は印達が宗銀を定角落ちまで指し込むなど圧倒し、36勝23敗の成績で終わりましたが、この過酷な勝負は印達と宗銀両者の体を蝕み、寿命を縮めたと言われています。

正徳元年（1711年）、伊藤家門下の宮本印佐と有浦印理が将軍徳川家宣に召し出され、米百五十俵を賜与されています。同年の御城将棋で印達と宗銀が平手で対戦し、後手の印達が勝利しました。これが印達の最後の御城将棋となりました。

正徳2年（1712年）9月、長男の印達が死去。同年の御城将棋で宗印は宗銀と角落ちで対戦し敗れます。これが宗銀の最後の御城将棋となりました。正徳3年（1713年）閏5月22日に名人の五代大橋宗桂が亡くなり、宗印が名人を襲位します。大橋本家は宗銀が継ぎましたが、同年8月22日に死去してしまいます。

享保7年（1722年）に最後の御城将棋に出勤し、大橋分家の大橋宗民との角落戦に敗れました。享保8年（1723年）に死去。法名は金龍院宗印日歩。墓所は東京墨田区の本法寺にあります。

近年の研究によると、既に生前に三代大橋宗与に将棋所を譲っていたと言われています。

花村元司によると、「攻め八分で局面の主導権を握って手将棋に持ち込むのが得意な棋風」であったとされ、『将棋営中日記』においては5位に挙げられています。

門下には宮本と有浦の他、原喜右衛門がいました。原は偽作棋譜を集めた『象戯名将鑑』の出版で知られますが、素行不良のため破門されたと伝えられています。

詰将棋

詰将棋では献上図式である『象戯図式』（俗称：将棋勇略）の他に『将棋精妙』（全て不成を含む作品で、「成らず百番」の異名がある）があります。

『象戯図式』については、一部が添田宗太夫の作ではないかという指摘があります。添田は当時の有力棋客の一人で詰将棋に優れた人物でした。

『将棋精妙』は没後135年の安政5年に開板されており、序を付した八代伊藤宗印は「生涯に2百番の作図を残した人物は稀である」と称えていますが、宗印のオリジナルかどうか疑問も持たれています。また、巻末の第99番と第100番は、玉方に妙手があって不詰となる「逃れ図」という趣向を持っています。

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