伊藤庸二

伊藤庸二の生涯と業績

1. 生い立ちと教育

伊藤庸二は1901年に千葉県に生まれ、名主の家系に育ちました。教育者である父の影響を受け、彼は学業に励み、旧制第一高等学校から東京帝国大学へ進学しました。在学中、海軍に委託され、1924年に電気工学科を卒業し、海軍に技術官として任官されました。

2. ドイツ留学と博士号取得

伊藤は1926年にドイツに留学し、ドレスデン工科大学でハインリッヒ・バルクハウゼン教授の指導の下、無線技術の研究を行いました。1929年には「二極真空管理論並びに超低周波発生」というタイトルの卒業論文を執筆し、博士号を取得しました。彼の研究は後に日本の無線通信における重要な基盤となりました。

3. 海軍技術研究所での活動

帰国後、伊藤は海軍技術研究所の電気研究部で技術官として働き、振極管や電離層の研究に従事しました。この頃、特に電波の伝播特性を測定する装置を開発し、国内初の電離層観測を実施し国際的にその成果を発表しました。彼の研究結果は長年にわたり、全世界に放送され続けました。これらの活動が軍事用短波通信における波長選択に寄与し、海軍技術有功章を受賞する結果となりました。

4. ヨーロッパ出張とマグネトロンの開発

1937年、伊藤はヨーロッパへの出張中にドイツの電波技術の進展とイタリアの兵器開発についての情報を得て、帰国後にこの情報を軍に報告しましたが、埋もれてしまいました。その後、彼は自らの研究でマグネトロンの開発に取り組み、1940年に黒リン電波探知装置の試作機を完成させましたが、海軍側の判断により開発は中止されました。

5. 日米開戦と原子力研究

日本がアメリカと開戦する中で、伊藤は原子力爆弾の研究が進められていることに危機感を抱き、調査機関設立の準備委員会を発足させました。そこでの議論は原爆製造の可能性を探るものでしたが、資源の不足から実現が困難であることが分かりました。

6. 戦後の活動と翻訳

戦後、伊藤は海軍の技術史を残す目的で調査活動を行い、光電社を設立しました。また、ドイツ留学中に発見した『もじゃもじゃペーター』を日本語に翻訳し、『ボウボウ・アタマ』として出版しました。

7. 晩年と死去

1955年、彼は光電製作所で指導の最中に急死しました。彼の研究と技術は、戦後の日本における工業や電波技術の基盤を築く上で重要な役割を果たしました。伊藤庸二の遺産は、彼の家族や彼が関わった多くの技術者たちによって引き継がれています。

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