伊藤氏貴

伊藤氏貴（いとう うじたか）

1968年、千葉県に生まれる。文芸評論家であり、明治大学文学部文芸メディア専攻の教授として教鞭をとる。近代日本文学を主な専門分野とし、その研究成果に基づいた批評活動を展開しているほか、多様なメディアで文学の魅力を発信している。日本近代文学会および江古田文学会の会員でもある。

経歴

幼少期を聖徳学園小学校で過ごし、その後、麻布中学校・高等学校を卒業。高等教育は早稲田大学第一文学部文芸専修に進学した。卒業後、日本大学大学院芸術学研究科修士課程を修了し、さらに研究を深めた。1998年には、「告白の文学性、あるいは文学の告白性 -近代日本文学を中心に」と題した論文で、日本大学より博士（芸術学）の学位を授与された。大学教員としてのキャリアは、2008年に明治大学の専任講師として始まり、2012年には准教授に昇任。現在、同大学の教授として多くの学生を指導している。これ以前にも、2009年度まで日本大学芸術学部文芸学科の非常勤講師を務め、聖徳学園中学校・高等学校でも教壇に立った経験を持つ。

受賞

評論家としての才能は早くから評価され、2002年には「他者の在処」により第45回群像新人文学賞（評論部門）を受賞している。

主な活動

教育・研究活動に加え、文芸界における多岐にわたる活動を行っている。特に注目されるのは、2014年に始まった「高校生直木賞」の企画者であることだ。この賞では実行委員会代表を務め、若い世代が文学に触れ、議論を深める機会を提供することで、読書推進と文学理解の促進に貢献している。また、江古田文学賞の選考委員を歴任し、新たな才能の発掘にも携わっている。文芸誌『季刊文科』の編集委員を務めるほか、教育出版が発行する高等学校の教科書『精選国語総合』や『精選現代文』の代表編集者を務めるなど、教育現場で使用される教材の作成にも深く関わっている。

著作・論文

近代文学を中心とした多くの著作を発表している。学位論文を基にした初の単著『告白の文学：森鷗外から三島由紀夫まで』（鳥影社 2002年）は、文学における「告白」というテーマを深く掘り下げた作品である。灘校の伝説的な教師を取り上げた『奇跡の教室：エチ先生と『銀の匙』の子どもたち：伝説の灘校国語教師・橋本武の流儀』（小学館 2010年、文庫化 2012年）や、読書法に関する『奇跡を起こすスローリーディング』（日本文芸社 2011年）など、教育や読書に関心を持つ読者にも広く読まれている。また、『漱石と猫の気ままな幸福論』（PHP文庫 2016）、『美の日本 「もののあはれ」から「かわいい」まで』（明治大学出版会 2018）、『同性愛文学の系譜 日本近現代文学におけるLGBT以前/以後』（勉誠出版 2020）など、幅広いテーマで文学と文化を論じている。論文としては、「『こころ』——あるいは恋の手本」（「江古田文学」52号）や「〈私〉の行方──私小説の詩学」（「群像」）などが挙げられる。

メディア出演・寄稿

専門家として、様々なメディアを通じて文学や文化に関する発言を行っている。雑誌では『本の話』での書評、「文學界」での新人小説月評、週刊金曜日での書評委員などを担当。新聞では、「週刊読書人」で文芸月評を、「読売新聞」で「ベストセラー怪読」の連載を担当した。テレビにおいても、『クローズアップ現代』『あさイチ』『ザ・プロファイラー』『Rの法則』『おはよう日本』『シューイチ』『アッコにおまかせ』『ミヤネ屋』といった報道・情報番組に出演し、解説やコメントを提供している。フジテレビの番組『オデッサの階段』では監修を務めた経験もある。ラジオではFM東京の「ベストセラーチャンネル」やNHK第1の「私も一言！ 夕方ニュース」に出演するなど、活発なメディア活動を展開している。これらの活動を通じて、研究室や教室にとどまらず、広く一般に向けて文学や読書の重要性を伝え続けている。

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