伊藤白潮

伊藤白潮（いとう はくちょう）

伊藤白潮は、昭和から平成にかけて活躍した日本の俳人です。大正15年（1926年）3月29日に、現在の千葉県横芝光町で生まれました。本名は和雄（かずお）といいます。平成20年（2008年）8月12日に、82年の生涯を閉じました。

千葉大学教育学部で学んだ後、俳句の道に進みます。昭和23年（1948年）には、俳人の田中午次郎に師事し、作句の基礎を学びました。師事から二年後の昭和25年（1950年）には、田中午次郎が主宰していた俳誌『鴫（しぎ）』の同人として名を連ねます。この俳誌『鴫』は、伊藤白潮の俳人としての活動の中心となります。

その後、俳誌『鴫』は一時休刊となりますが、昭和50年（1975年）に伊藤白潮の手によって復刊されます。復刊にあたり、伊藤白潮は自ら主宰となり、誌の編集・発行を担うとともに、多くの俳人を育てました。主宰として、『鴫』は俳壇において独自の存在感を示す俳誌として発展していきます。

伊藤白潮は、俳句の実作者としてだけでなく、俳壇全体の運営や振興にも貢献しました。俳人協会の評議員を務めたほか、ゆかりの深い千葉県市川市では、市川市俳句協会の会長として地元の俳句文化の発展に尽力しました。

その創作活動は多岐にわたり、数多くの句集を刊行しています。初期の代表作とされる『在家』は、昭和57年（1982年）に草韻新社から鴫叢書として刊行され、その後平成15年（2003年）にはウエップ俳句新書として再刊されています。また、夢や幻、あるいは能の世界に材を取ったと推測される句集『夢幻能』も、昭和60年（1985年）に草韻新社鴫叢書から刊行されています。自身の作品をまとめた『伊藤白潮集』が平成元年（1988年）に俳人協会から自註現代俳句シリーズとして出版されたことは、俳壇における評価の高さを示すものと言えるでしょう。

平成に入ってからも精力的に句集を発表しています。

『游 句集』（平成5年／1993年、角川書店）
『伊藤白潮句集』（平成7年／1995年、ふらんす堂 現代俳句文庫）
『生きめやも 伊藤白潮句集』（平成9年／1997年、角川書店 今日の俳句叢書）
『ちろりに過ぐる 句集』（平成16年／2004年、角川書店）
* 『卍 句集』（平成18年／2006年、文學の森）

これらの句集を通じて、伊藤白潮は現実的な視点と内面的な世界観、あるいは伝統的な題材と現代的な感覚を融合させた独自の句境を探求し続けました。その句は、時に思弁的でありながら、深い人間的な情感をたたえていると評されます。

長年にわたり俳句の創作と普及に貢献し、多くの俳人に影響を与えた伊藤白潮は、日本俳壇において確固たる足跡を残しました。

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