伊藤精美

伊藤精美（いとう きよみ）は、1948年に愛知県で生まれた、日本のランドスケープアーキテクトであり地方公務員としてのキャリアを歩んだ人物です。

1971年に千葉大学園芸学部を卒業後、東京都庁に入庁しました。公務員としての一歩を踏み出した後、文京区の土木部へ出向し、公園緑地課の課長を務めていた時期（1991年頃）には、歴史ある元町公園の復原工事を指揮しました。この経験は、都市における緑地空間の保全と再生という、その後のキャリアにおいても重要なテーマへの取り組みの始まりとなりました。

その後、東京都庁および関連団体で公園緑地行政における様々な要職を歴任しました。東京都公園協会の管理部施設課長として、公園施設の維持管理や改善に現場レベルで関わり、利用者にとって快適な空間づくりの基礎を支えました。また、東部公園緑地事務所長としては、広範な区域の公園・緑地の管理・運営を統括し、現場の課題解決と質の向上に努めました。東京都環境局の参事として、公園緑地と環境保全との連携といった、より広範な視点からの政策立案にも携わりました。さらに、建設局公園緑地部長という要職に就き、東京都全体の公園緑地行政の企画・推進において中心的な役割を果たしました。財団法人東京都公園協会の理事や、東京都建設局参事（公園計画担当）としても、東京都の都市計画における公園・緑地の位置づけや、将来的な整備計画の策定に関与し、東京の緑のインフラ整備に多大な貢献をしました。

東京都を退職した後も、その豊富な知識と経験を活かした活動を続けました。株式会社石勝エクステリアでは、民間におけるランドスケープの設計や施工に携わり、公共空間だけでなく多様な空間での緑化に取り組ました。また、東京都建設防災ボランティア協会でも活動し、行政で培った技術や経験を、地域社会への貢献や防災・減災といった重要な分野で役立てました。

長年にわたる東京都の公園緑地行政への貢献と、ランドスケープアーキテクトとしての顕著な実績が評価され、2013年には第35回日本公園緑地協会北村賞を受賞しました。この賞は、公園緑地分野において特に功労のあった個人に対して贈られる、非常に栄誉ある賞であり、伊藤氏の業績が高く評価されたことを示しています。

著書としては、多摩ニュータウンの計画・開発における公園緑地の役割や変遷、そしてその現状と意義について詳細に論じた『多摩ニュータウンの公園緑地』（2011年、東京都公園協会が発行する東京公園文庫シリーズの第51巻）があります。この著作は、日本のニュータウン開発における緑地空間のあり方について、専門的な知見を提供する重要な文献となっています。

伊藤精美氏は、地方公務員として東京都の公園緑地行政を牽引し、都市の緑化と環境整備に貢献するとともに、ランドスケープアーキテクトとしても実践的な活動を展開しました。その功績は、多くの公園や緑地、そして著作を通して、現代の都市景観や環境行政に影響を与え続けています。

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