伊賀貞雪

伊賀貞雪：愛媛県政を彩った政治家の軌跡

伊賀貞雪は、1922年11月14日に生まれ、愛媛県知事を3期務めた政治家です。彼の政治家としてのキャリアは、愛媛県庁での行政職としての経験に裏打ちされています。県庁入庁後、財政課長、出納長などの要職を歴任し、白石春樹知事の下で副知事を務めました。

1987年、白石知事の後継として指名を受け、愛媛県知事選挙に立候補。県議会議員との選挙戦を経て、事実上、白石知事から禅譲を受ける形で知事の座に就きました。

生活文化県政の推進

知事就任以来、「生活優先と文化重視」を基本理念とする「生活文化県政」を掲げました。1991年には、全国初の「生活文化県宣言」を発表し、県民の生活と文化の向上を目指しました。一方で、えひめ瀬戸内リゾート開発構想や第二国土軸構想など、開発重視の政策も推進しました。

在任中には、総合科学博物館、歴史文化博物館、県美術館、生涯学習センター、えひめこどもの城、テクノプラザ愛媛、アイテム愛媛など、数多くの文化施設を建設しました。また、国の景気対策も後押しとなり、道路整備にも力を入れましたが、その結果、土木費が大幅に増加し、後の県財政悪化を招いたという側面もありました。

白石前知事との確執

伊賀知事は、白石前知事からの禅譲という形で知事に就任しましたが、次第に独自路線を模索し始め、白石県政の色を薄めようとする動きを見せます。1989年には、白石前知事が定めた県章を廃止し、新たな県章を制定したことが、その象徴的な出来事として挙げられます。

この動きに対し、県議会内では反発が起こり、県議団は伊賀派、反伊賀派、そして独自の候補を擁立する3派に分裂。県選出の国会議員も2派に割れるなど、県政を揺るがす事態となりました。

最後の知事選と保守体制の崩壊

1999年の知事選挙は、伊賀知事にとって最後の戦いとなりました。長年続いた保守一枚岩の体制が崩壊し、自民党県議団は伊賀派と反伊賀派に分裂。現職の伊賀知事を党が推さないという異例の事態となりました。共産党以外の野党が、県政刷新を目指して自民党と手を結び、保革入り乱れての激戦となりました。

選挙戦では、県の関係団体をフル稼働させ、市町村長に伊賀知事名で依頼文書が送付されるなど、エスカレートした動きも見られました。結果、反伊賀派が推す新人候補の加戸守行氏が、現職の伊賀知事を18万票以上もの大差で破り、当選を果たしました。

この選挙は、年末年始に行われたという異例の日程や、不在者投票の多さなど、様々な点で注目を集めました。県議会は、県選管の問責決議案を可決する事態となりました。

新知事となった加戸氏も、伊賀氏を支持した農業団体、特に農協トップの姿勢に厳しい態度を示し、選挙戦のしこりが残ったことを認めています。

職歴と受章

伊賀貞雪は、1946年に愛媛県庁に入庁し、1970年に財政課長、1975年に知事公室長、1978年に調整振興部長、1980年に出納長、1982年に副知事を歴任しました。そして、1987年に愛媛県知事に就任し、1998年に任期満了で引退しました。2013年には、旭日重光章を受章しています。

伊賀貞雪の政治家としてのキャリアは、愛媛県政に大きな足跡を残しました。彼の「生活文化県政」は、県民の生活と文化の向上に貢献しましたが、同時に、県財政の悪化や、保守体制の崩壊という課題も残しました。彼の功績と課題は、今後の愛媛県政を考える上で、重要な教訓となるでしょう。

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