伊達千広

伊達千広（だて ちひろ）

伊達千広は、享和2年（1802年）に紀州藩士の家に生まれ、後に叔父の養子となりました。国学者として、また紀州藩の藩士として幕末の激動期を生きました。彼の人生は、藩政改革への情熱、尊王攘夷運動への参加、そして不遇な幽閉生活という、波乱に満ちたものでした。

生い立ちと藩政での活躍

伊達千広は、幼少の頃から国学を学び、その才能を開花させました。12歳で家督を継ぎ、その後藩主の小姓として仕え、その才能を認められて監察役などの要職を歴任しました。彼は、家老を補佐し、藩政改革を主導する中心人物として活躍しました。また、藩内で尊王論を唱え、その後の尊王攘夷運動へと繋がる思想を広めました。

幽閉と尊王攘夷運動への参加

しかし、藩内の権力闘争に巻き込まれ、改革反対派によって危険思想の持ち主として捕えられ、長期間にわたって幽閉生活を送ることになりました。その後、土佐藩主の尽力により釈放されましたが、藩を脱藩し、尊王攘夷運動に参加します。しかし、再び藩によって連れ戻され、再び幽閉されるという不遇な時期を過ごしました。

明治維新後と晩年

明治維新後、幽閉から解放された伊達千広は、大阪に移り住み、敬愛していた藤原家隆ゆかりの地に庵を建てて静かな生活を送りました。晩年は、息子である陸奥宗光の屋敷に移り、悠々自適な生活を送りました。彼の人生は、激動の時代を背景に、藩士としての義務と、国学者としての信念の間で揺れ動いたものでした。

思想と著書

伊達千広は、その生涯を通じて多くの著作を残しました。特に有名なのは、『大勢三転考』であり、これは幕末の政治情勢を分析した歴史書として知られています。その他にも、『和歌禅話』『随随筆』『余身帰』『随縁集』『枯野集』など、多様な分野にわたる著作があり、彼の思想や教養の深さを物語っています。これらの著作は、現代においても歴史研究の貴重な資料として評価されています。

家族

伊達千広は、宇佐美祐長の息子として生まれ、叔父である伊達盛明の養子となりました。妻は、養父の娘である綾子です。また、渥美源五郎の娘である政子を妻とし、間に陸奥宗光をもうけました。また、娘の初穂は、中島信行に嫁いでいます。

まとめ

伊達千広は、幕末の動乱期に、藩士として、国学者として、そして思想家として多大な影響を与えました。彼の生涯は、時代の変化に翻弄されながらも、自身の信念を貫き通したものであり、その思想と行動は、後世に多くの教訓を与えています。

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