伏龍

伏龍（ふくりゅう）について

伏龍は、第二次世界大戦末期に大日本帝国海軍によって開発された特攻兵器で、「人間機雷」とも呼ばれています。この兵器は、兵士が特殊な潜水具を着用し、海底で敵の上陸用舟艇を待ち構え、棒付き機雷を接触させて爆破する戦法を採用していました。

使用された装備

伏龍の潜水具は、1945年3月に海軍工作学校で急遽試作されたもので、資材不足の中で既製の軍需品を最大限利用して制作されました。装着者はゴム服や潜水兜を身に着け、酸素瓶や吸収缶、鉛のバンドを使用して、総重量は68kgに達しました。視界が悪く、足元しか見ることができない状況で、兵士は命がけの任務に挑むことになりました。待機までは約5時間可能でしたが、深度に制限があり、特に棒機雷の長さによって待機可能な深度は異なり、4メートルまたは7メートル以内と定められていました。

作戦の概要

伏龍は、本土決戦の一環として計画されたもので、特攻機が敵の艦隊に体当たりし、その後ろを伏龍部隊が攻撃するという構想が立てられていました。陸軍の肉薄攻撃の考えに影響を受け、兵士たちは海中を歩いて移動することを前提にしていましたが、実際は視界も悪く、動きも鈍くなるため、移動は非常に困難でした。また、棒付き機雷が効果を発揮できるのは、敵艇が真上を通過する必要があったため、実用性には疑問が残りました。

訓練中の問題点

伏龍の最大の欠陥の一つは、潜水具自体の設計にありました。酸素供給が不十分で、呼吸の方式を誤ると炭酸ガス中毒に陥る危険があり、訓練中にも多くの事故が発生しました。また、装備の不具合により、訓練中に横須賀だけでも10名もの殉職者が出ています。海中での意思疎通も難しかったため、緊急時の指示が行き届かず、隊員たちの命が危険にさらされることが多くありました。

歴史的背景と運用

1945年、中央からは海軍工作学校に対して掃海潜水具の開発が指示され、結局この装備が特攻隊として編成されることとなりました。清水登大尉が関与し、特攻用としての利用価値も認められましたが、隊員たちは訓練に集まったものの、その多くは予科練出身者や古兵で、一般兵ではなく、身体能力の高い者が選ばれました。しかし、これらの隊員たちは法的なキャリアの一部強制動員であり、自分の意志で選んだわけではありませんでした。

結果と顕彰

結局、伏龍は実戦には投入されず、戦争が終結しました。彼らの訓練の一環として281名が死亡するという悲劇も起きました。戦後、特攻隊の顕彰と歴史の記憶が重要視されており、靖国神社にも関連する顕彰碑が設置されています。

伏龍は当時の日本海軍の特攻戦法の一部であり、兵士たちの命をかけた任務がどれほど危険なものであったかを示す一例です。今日では、その歴史を振り返り、二度と同じ過ちを繰り返さないようにすることが求められています。

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