伝染性軟属腫

伝染性軟属腫：水イボの原因と治療

伝染性軟属腫は、ポックスウイルス科に属するMolluscum contagiosum virusが引き起こす、良性のウイルス感染症です。一般的に「水イボ」として知られており、主に小児に発症しますが、免疫力が低下した成人や高齢者にもみられます。1841年にはHendersonとPatersonによって報告されています。

臨床症状

伝染性軟属腫は、皮膚に特徴的な丘疹（小さな隆起）として現れます。これらの丘疹は、通常2～5mm程度の大きさで、平らで円形、肉色をしています。表面は滑らかで、頂点がわずかにへこんでいるのが特徴です。発疹は、手掌と足底を除く体のあらゆる部位に現れる可能性があり、小児では顔面、体幹、四肢に、成人では陰部、陰茎、外陰部に多く見られます。免疫不全の患者では、全身に多発し、特に顔面に大きなイボができるのが特徴です。潜伏期間は様々で、治療せずに放置すると、半年から2年間持続するケースもあります。しかし、多くの場合、自然に治癒します。免疫力の低下している患者では、重症化し、直径10～15mmにまで大きくなることもあります。

病原体と感染経路

病原体は、前述の通りポックスウイルス科のMolluscum contagiosum virusです。感染経路は主に、皮膚の直接接触です。しかし、ビート板やタオルなどの間接的な接触によっても感染する可能性があり、成人では性行為を通して感染することもあります。

鑑別診断

伝染性軟属腫は、他の皮膚疾患と鑑別診断する必要があります。特に、皮膚クリプトコッカス症や尋常性疣贅（イボ）とは区別する必要があります。これらの疾患は、外観や症状が似ている場合があります。正確な診断のためには、医師による診察が重要です。

治療

多くの場合、伝染性軟属腫は自然治癒するため、特に治療は必要ありません。しかし、美容上の理由や、性感染症の場合の感染拡大を防ぐために、治療を行うことがあります。治療法には、外科的な方法と薬物療法があります。

外科的療法

外科的療法は、イボを直接除去する方法です。具体的には、ピンセットによる掻爬、液体窒素による凍結手術、レーザー療法、電気焼灼、硝酸銀ペーストの塗布などがあります。これらの処置は痛みを伴うため、事前に局所麻酔（例えば、ペンレステープ：リドカインテープ）を使用することが一般的です。

薬物療法

薬物療法では、イボの除去や症状の軽減を目的とした外用薬を使用します。スピール膏（サリチル酸絆創膏）、抗ウイルス薬（ビダラビン）、硝酸銀ペースト、トリクロロ酢酸、グリコール酸、イミキモドクリームなどが用いられます。

まとめ

伝染性軟属腫は、比較的軽症のウイルス感染症ですが、症状が気になる場合や、自然治癒しない場合は、皮膚科医への受診をおすすめします。医師は、適切な診断を行い、必要に応じて治療法を選択し、適切なアドバイスを提供します。早期の治療開始は、症状の悪化を防ぎ、治癒を早めるのに役立ちます。また、感染拡大を防ぐためにも、接触感染に注意する必要があります。 タオルや衣類などの共有を避けることが重要です。

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