佐久間総一郎

佐久間総一郎（さくまそういちろう）氏は、1956年2月15日生まれの日本の実業家です。新日鐵住金（現日本製鉄）において代表取締役副社長を務めるなど、鉄鋼業界の重責を担いました。企業経営での豊富な経験に加え、現在は日本製鉄顧問などを経て日鉄ソリューションズ顧問を務める一方、内閣府の公益認定等委員会委員長や、一般社団法人日本国際紛争解決センター理事長、一般財団法人地球産業文化研究所理事長といった公的・公益的な立場で多岐にわたる活動を展開しています。

経歴と人物

東京都出身の佐久間氏は、1974年に東京教育大学附属駒場高等学校（現在の筑波大学附属駒場高等学校）を卒業。その後、東京大学法学部で法律を学び、1978年に卒業と同時に新日本製鐵（現在の日本製鉄）に入社しました。

入社後は法務部門を中心にキャリアを積み、2004年には総務部部長に就任。2009年には執行役員として法務、内部統制・監査といった分野を統括する責任者となります。2012年には常務取締役に昇進し、同年10月の新日本製鐵と住友金属工業の合併後も引き続き新日鐵住金常務取締役を務めました。そして2014年には、代表取締役副社長に就任し、総務、法務、内部統制・監査、業務プロセス改革、人事労政、環境、さらには各海外事務所といった広範な領域を担当しました。この副社長在任中には、新日鐵と住友金属工業の大型合併の実現や、韓国ポスコ社との間で争われた電磁鋼板に関する国際訴訟への対応など、企業の存続と発展に関わる数多くの重要案件の解決に尽力しました。

佐久間氏の活動は企業内の業務にとどまらず、会社法や独占禁止法、コーポレート・ガバナンス、さらには世界貿易機関（WTO）を含む国際貿易・投資制度といった分野において、産業界を代表する立場から積極的に意見を表明してきました。また、政府の要請に応じて様々な公職にも就任し、国の規制改革や地球環境問題への対応といった社会課題の解決に貢献しました。大学などでの講演活動も多数行っており、その知見を広く伝えています。

2018年に代表取締役副社長を退任して常任顧問に就き、2019年からは日本製鉄常任顧問、2020年からは日本製鉄顧問を務めました。現在もコニカミノルタやJX金属の社外取締役として、企業の経営監視や助言に関与しています。

公職・団体役職

佐久間氏が歴任した公職は非常に多岐にわたります。内閣府においては規制改革会議委員、規制改革推進会議委員及び同農林水産ワーキング・グループ座長、内閣官房では統計改革推進会議統計行政新生部会座長を務めました。その他にも、公的・準公的資金の運用・リスク管理等に関する有識者会議委員、未来投資会議構造改革徹底推進会合メンバー、人事院政策評価懇談会委員など、国の政策形成に関わる重要な会議で委員を務めました。法務省法制審議会委員、環境省中央環境審議会委員、経済産業省コーポレート・ガバナンス・システム研究会委員、産業構造審議会通商政策部会不公正貿易政策・措置調査小委員会委員といった、各省庁の専門的な審議会にも名を連ねています。特に1986年から1989年にかけては、経済協力開発機構（OECD）科学技術産業局のアドミニストレーターとしてパリ本部で勤務し、国際的な舞台での経験も積んでいます。

経済団体においても、日本経団連経済法規委員会企画部会長及び競争法部会長、環境安全委員会地球環境部会長を務めるなど、主要な役職を担いました。さらに国際的な経済活動に関する議論にも深く関与し、OECD諮問委員会（BIAC）の多国籍企業行動指針改訂検討タスクフォース座長や、OECD-BIAC国際投資・企業行動委員会副委員長及び日本代表委員を務めました。また、公益財団法人新日鐵住金文化財団（現在の日本製鉄文化財団）の代表理事も務めるなど、文化・社会貢献活動にも関わりを持っています。

著作

佐久間氏は、自身の専門分野に関する著作も発表しています。主なものとして以下が挙げられます。

「新・OECD多国籍企業行動指針（RBCに関する行動指針）―その実践により「責任ある企業行動」の促進、実現へ」（月刊経団連、2024年6月号）
「競争政策この10年－ビジネスから見た足跡－」（公正取引No.744、2012年10月）
座談会録「法的観点からみたＴＰＰ」（ジュリストNo.1443、2012年7月)
「優越的地位濫用ガイドラインについて公取委に望むこと」（公正取引No.724、2011年2月）
「実践的分析－産業界から見た米国1916年アンチ・ダンピング法に関する損害回復法の意義と問題点及び経済法の域外適用に対する対抗立法への期待－」（日本国際経済法学会年報第16号、2007年）
“Is the WTO dispute settlement mechanism important to business?”, in The WTO in the Twenty-first Century: Dispute Settlement, Negotiations, and Regionalism in Asia (Cambridge University Press 2007)
座談会録「変革期の国際通商法と日本－ＷＴＯ，ＦＴＡ，ＥＰＡを中心に」（法律時報第77巻6号、2005年6月)
「装置産業とアンチ・ダンピング」（日本国際経済法学会年報第9号、2000年）

これらの著作や活動から、佐久間氏が企業経営、特に法務やコーポレート・ガバナンスの分野で深い知見を持ち、それを基に政策提言や社会貢献にも積極的に取り組んできた実業家であることが伺えます。

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