佐伯城

佐伯城：豊後国の要衝を担った山城

佐伯城は、大分県佐伯市にそびえる歴史深い城郭です。江戸時代には佐伯藩の藩庁が置かれ、豊後国の政治・経済の中心地として重要な役割を果たしました。「さえきじょう」と読むのは誤りであり、正しくは「さいきじょう」と読みます。現在では国の史跡に指定され、大分百景や続日本100名城にも選定されているなど、その歴史的価値は広く認められています。

慶長年間の築城と幾多の変遷

関ヶ原の戦いで徳川方に与した毛利高政は、慶長6年（1601年）に佐伯2万石を与えられ、旧佐伯氏居城である栂牟礼城に入城しました。しかし、栂牟礼城は険しい山城であったため、平時の統治には不便でした。そこで、慶長7年（1602年）から、より戦略上有利な八幡山にて新城の築城が始まりました。

築城には、織田信長の家臣で安土城築城にも携わった市田祐定が縄張りを担当し、姫路城の石垣工事にも携わった羽山勘左衛門が石垣の施工を指揮しました。6年の歳月をかけ、慶長11年（1606年）には城郭の大部分が完成しました。しかし、元和3年（1617年）には二の丸からの出火により、本丸と天守閣が焼失するという大きな損害を受けました。

寛永14年（1637年）、3代藩主毛利高尚の時代に麓に三の丸を増築し、居館を移しました。以降、三の丸が城の中心的な機能を果たすようになりました。本丸や二の丸は、焼失や居館の移転によって荒廃が進みましたが、宝永6年（1709年）、6代藩主毛利高慶によって天守閣を除く建物が修復されました。

明治4年（1871年）に佐伯県庁が設置されると、佐伯城は廃城となり、三の丸以外の建物は取り壊され、土地は毛利家に譲渡されました。その後、昭和45年（1970年）には三の丸御殿の一部が移築され、現在も残る貴重な遺構となっています。平成29年（2017年）には続日本100名城に選定され、令和元年（2019年）には佐伯市の文化財（史跡）に指定されるなど、近年もその歴史的価値が再認識されています。

山上に築かれた堅固な山城

佐伯城は、標高144メートルの八幡山山頂に築かれた総石垣造りの山城です。本丸を中心に、南北に長く連郭式に配置され、本丸の南には二の丸、西出丸、北には北出丸、捨曲輪などが配されています。3代高尚の時代に麓に三の丸が築かれたことで、城郭全体の規模はさらに拡大しました。

城内には、3重の天守閣を擁する本丸、二重櫓5基、平櫓1基、城門7棟など、多くの建物が建ち並んでいました。本丸と二の丸は堀切で区切られ、当時は廊下橋が架けられていたと推測されています。

遺構と歴史博物館

山上の建物は明治初期に撤去されましたが、三の丸櫓門や、市内へ移築された建物など、いくつかの遺構が現存しています。これらの遺構は、佐伯城の建築様式や当時の生活を知る上で貴重な資料となっています。佐伯市歴史博物館には、大手門跡付近にあった役所の建物である三府役所跡や毛利家御居間などが保存されており、当時の様子を垣間見ることができます。これらの遺構や資料を通して、佐伯城の歴史と文化に触れることができます。

まとめ

佐伯城は、その壮大な規模と歴史的意義から、日本の城郭史における重要な位置を占めています。数々の変遷を経て現在も残る遺構は、未来へと続く歴史の証であり、訪れる人々に深い感動を与え続けることでしょう。 城跡を訪れ、その歴史に思いを馳せてみるのも良いでしょう。

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