佐護彰

佐護彰：異色の経歴を持つ政治家、8年間の日進市政を振り返る

佐護彰氏は、1942年、満州国奉天市（現・瀋陽市）に生まれました。祖父は長崎県の村長を務めていたという家系に育ち、終戦後は長崎県に引き揚げました。その後、仕事の関係で20回もの転居を経験するなど、波乱に富んだ人生を送っています。多様な経験は、後年の政治活動にも影響を与えたと言えるでしょう。趣味は油絵で、二科展への入選経験も4回に上ります。30歳からは武蔵野美術短期大学で学び、芸術への情熱も持ち合わせていました。

1960年代後半、佐護氏は愛知県日進町（現・日進市）に定住。日本電信電話公社（現・NTT）に就職し、そこで労組活動にも従事しました。政治への関与は、1983年、日本社会党の推薦を受けて日進町議会議員選挙に出馬、初当選したことから始まります。町議会議員として3期務めた後、1994年10月1日、日進町は市制施行し日進市となりました。

日進市議会議員時代、佐護氏は幅広い市民との交流を深め、1996年には日本社会党を離党。1999年3月10日、市議会本会議の一般質問で、日進市長選挙への出馬を表明しました。同年4月に行われた市議選では、市民グループ出身の女性候補が1位、2位を独占する結果となり、大きな注目を集めました。

同年7月に行われた市長選挙において、佐護氏は「政党の推薦支持お断り」を掲げ、自民党、自由党、公明党、そして連合愛知の推薦を受けた現職の山田一麿氏ら2候補を破り、僅か821票差で初当選を果たしました。市議会の26名中、佐護氏を支持したのは5名のみで、残りは現職側についたという接戦でした。選挙結果発表の夜、現職の山田氏の選挙事務所では当選祝賀会が準備され、多くの関係者が現職の勝利を確信していましたが、佐護氏の僅差の勝利は大きな驚きをもって迎えられました。

2003年には元市職員や元市議らとの選挙戦を制し再選。保守系議員との対立が続く中、佐護市長は市民参加を重視した市政運営を行いました。自治基本条例や環境基本条例の制定、行政とNPOの協働を推進するための「ルールブック」発行など、市民主体のまちづくりに積極的に取り組んだ8年間でした。特徴的なひげも、佐護氏のトレードマークとして市民に親しまれていました。

2007年の市長選に出馬せず引退後は、脱原発をめざす首長会議の会員として活動するなど、政治への関与を継続しています。佐護氏の経歴と政治姿勢は、地方政治における市民参加の重要性を改めて考えさせるものです。転勤が多く、美術にも精通した、そして僅差の選挙を勝ち抜いた、佐護彰という人物像は、地方政治史において特異な存在として記憶されることでしょう。

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