作物研究所

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構（農研機構）の一翼を担う機関として、作物研究所は日本の農業技術開発において中心的な役割を担っています。その所在地は茨城県つくば市観音台にあり、主要作物の研究拠点として機能しています。

作物研究所が取り組む研究は多岐にわたり、日本の農業生産の基盤となる様々な作物の生産性向上や品質改良、新たな価値創造を目指しています。研究組織は、特定の作物や研究課題に特化したチームによって構成されています。例えば、日本の主食である稲に関しては、栽培コストの削減に繋がる低コスト稲育種、効率的な品種改良を実現するマーカー育種、さらには収量性を高めるための研究、そして消費者の嗜好に応える米の品質向上に関する研究が進められています。また、最先端の遺伝子技術を活用した稲の革新的な品種開発も行われています。

大豆分野では、日本の食料自給率向上に不可欠な大豆の収量性向上や病害虫抵抗性強化を目指した育種研究、そして大豆の生育メカニズムを詳細に解析し、安定生産や品質向上に繋げる生理研究が行われています。麦類についても重要な研究対象であり、特にパン用小麦やめん用小麦といった特定の用途に適した品種の開発に力が入れられています。これに加え、大麦の研究や、麦類全般にわたる遺伝子技術の応用研究も展開されています。

研究対象作物は、稲、小麦、大麦、大豆といった穀類や豆類に加え、食用サツマイモも含まれており、それぞれの作物特性に応じた専門的な研究が進められています。また、単なる食料としての価値だけでなく、作物が持つ健康機能成分に着目した機能性利用研究チームもあり、新たな機能を持つ作物の開発や、既存作物の付加価値向上にも取り組んでいます。

作物研究所の研究活動の目的は、日本の農業が直面する課題、例えば食料自給率の向上、生産コストの削減、農業者の高齢化に対応した省力技術の開発、地球温暖化といった環境変動への適応、そして消費者の多様化するニーズへの対応などに貢献することにあります。これらの研究成果は、新品種の開発や新たな栽培技術として普及し、日本の農業生産現場に活かされています。

農研機構の一部門として、他の研究機関や大学、さらには民間企業とも連携しながら、国内外の最先端の研究成果を取り入れつつ、独自の研究を推進しています。所長のもと、各研究チームがそれぞれの専門性を活かし、日本の主要作物の研究開発を牽引しています。

このように、作物研究所は、基幹作物の品種改良から栽培技術、生理生態、品質、機能性研究まで、幅広い分野で日本の農業技術の発展に不可欠な役割を果たしており、日本の食料の安定供給と農業の持続的な発展に大きく貢献しています。

もう一度検索