保坂祐二

人物

保坂 祐二（ほさか ゆうじ）は、1956年東京生まれの政治学者。韓国に帰化し、世宗大学校教授および独島総合研究所所長を務めている。竹島（韓国名：独島）問題に関する第一人者として、一貫して韓国の領有権を主張し、多岐にわたる研究活動を行っている。

経歴

東京大学在学中に明成皇后殺害事件を知り、卒業後は日本が韓国を併合した歴史的な経緯への疑問から、1988年に韓国へ留学した。高麗大学校政治外交学科に編入学して学び、同大学院で修士課程、博士課程を修了し、政治学博士号を取得した。

1998年より世宗大学校の教員となり、2003年に韓国に帰化。帰化後も日本の名前を使用しているのは、日本の氏名を使う方が竹島（独島）が韓国領であることを示す上で効果的であると考えているためである。

社会的な活動も多岐にわたり、2004年には韓国在住の日本人・日系韓国人として初めてソウルの普信閣での打鐘に招待された。韓国外交通産部長官賞（2005年）、世宗大学優秀教授特別賞（2007年、2015年）などを受賞している。

2008年からは世宗大学校付設独島総合研究所の所長を務め、竹島問題に関する研究の拠点として活動している。また、韓国独立記念館理事（2015年選出）、共に市民党最高委員（2020年）など、様々な公的役職を歴任または現任している。

主な研究と主張

保坂氏の研究は、竹島（独島）が歴史的・国際法的に韓国固有の領土であることを証明することに焦点を当てている。特に日本の領有権主張を批判しており、日本側が提示する根拠には歪曲や隠蔽が多いと主張している。

林子平の地図に関する研究

1785年に林子平が作成した「三国通覧輿地路程全図」に描かれた竹嶋（現在の鬱陵島）とその北東近傍の小島（松島、現在の竹島）が朝鮮半島と同色で描かれている点を重視。この地図が江戸幕府の公式地図として使用された歴史があることから、当時の日本政府が現在の竹島を朝鮮領と認識していた証拠であると主張している。

太政官指令文に関する研究

1877年の太政官指令で「竹島外一島」を日本の版図外とした決定について分析。「太政類典」に記載された「竹島」（鬱陵島）と「松島」（現在の竹島）の特徴や隠岐からの距離に関する記述を詳細に検証し、ここでいう「外一島」が現在の竹島（独島）であり、明治政府がこれを朝鮮領と認めた決定的な証拠であると主張。日本の研究者による指令文の解釈に対し、文献的事実に基づかないものとして批判している。

鬱陵島と独島の名称変遷研究

朝鮮時代の文献や李奎遠と高宗の対話記録などを分析し、于山島、松竹島、石島、独島といった島名の変遷と、それが現在の鬱陵島や竹島（独島）を指していることを論証。特に1900年の大韓帝国勅令第41号で鬱島郡の管轄範囲に含められた「石島」が、当時鬱陵島住民が「ドクソム」と呼んでいた現在の竹島（独島）であると主張している。

ラスク書簡と日韓基本条約に関する見解

サンフランシスコ平和条約に関連するラスク書簡（1951年）について、これが米国の単独見解に基づく秘密文書であり、条約の結論とはなり得ないとして、独島を日本領とする根拠にはならないと主張。また、1965年の日韓基本条約と同日に締結された紛争解決に関する交換公文に国際司法裁判所による解決方式が含まれていないことから、日本が国際司法裁判所への提訴を提案することは理にかなわない、あるいはすでに権利を喪失しているとの見解を示している。

日本の公式文書に関する指摘

明治期に日本の海軍省水路部が発行した『水路誌』で独島が「リヤンコールト列岩」として紹介され、日本による幕末以前の歴史的領有の記述がない点などを挙げ、19世紀半ばまでに日本が独島の歴史を忘却し、領有していなかった証拠であると指摘している。

その他の活動

竹島問題に関する情報発信にも積極的で、ウェブサイト「獨島と東アジア」、「TRUTH of DOKDO（独島の真実）」（韓国人歌手キム・ジャンフンと共同開設）を運営し、関連資料や研究論文を公開している。また、韓国の漫画家と共同で竹島をテーマにした漫画を制作するなど、様々なメディアを通じて活動を行っている。

著書

韓国国内向けや英語圏向けの著書を多数刊行しており、竹島問題や日本史、日韓関係史に関するものが多い。主な著書に『日本の古地図にも独島はない』、『我が歴史独島』、『大韓民国－独島教科書』などがある。日本向けには、自身の著書の訳書が数冊刊行されている。

参考文献
保坂祐二の関連著書および論文
各種報道資料

関連項目
竹島問題
独島
* 鬱陵島

もう一度検索