保川春貞 (2代目)

二代目 保川春貞（1830年 - 1887年）は、幕末から明治にかけて京都で活躍した浮世絵師です。初代保川春貞と歌川国芳に師事し、多岐にわたる活動を行いました。

来歴

二代目春貞は、岡本姓で、本姓は源氏、名は重美といいました。通称は正太郎、号は春輝、養徳斎、積善堂、はるの舎などを用いていました。作画期は嘉永元年（1848年）から明治時代にかけてです。

最初は信貞と号していましたが、嘉永2年（1849年）に初代春貞が亡くなると、その遺命により二代目を襲名しました。その後、国芳に入門し、一時的に歌川姓を名乗ったという説がありますが、確証となる資料は見つかっていません。しかし、彼の画風には歌川派の影響が見られ、息子である保三郎も歌川派を自称していたことから、何らかの関係があったと考えられています。

春貞の版画作品はほとんど知られていません。版本としては、嘉永6年（1853年）頃に刊行された滑稽本『翫雀死出の旅立』に挿絵を描いたとする資料があります。

明治元年（1868年）に本姓の岡本に戻り、岡本春暉と改号しました。「春」の字は春貞から引き継いだものと思われますが、「暉」の由来は不明です。同時代の京絵師である横山清暉との関係も推測されていますが、それを裏付ける資料は見つかっていません。明治8年（1875年）には京都博覧会で妙技牌を受賞したようですが、どのような作品かは分かっていません。

高橋由一に洋画を学んだとされ、明治12年（1879年）に東山双林寺で開かれた洋画展覧会にも名前が記録されていますが、油彩画は発見されていません。享年58歳で、墓所は東山大谷にあるとされていますが、現存していません。息子の保三郎も岡本春貞の名で活動し、明治17年（1884年）の第2回内国絵画共進会で銅賞を受賞しています。

作風と評価

春貞の作品は、歌川派と三畠上龍風を折衷した美人画が残っています。一般的には風俗画を得意とする絵師として知られています。京都府立総合資料館が所蔵する『岡本春暉旧蔵資料』からは、晩年は肖像画に熱中し、模写やスケッチを多く制作していたことが分かります。また、「滋野井之履歴書」や「琵琶の湖水廻る名所図蹟」、「油断大敵顔（おも）ふべ誌」、「虎列刺（これら）病予防之心得」など、多岐にわたる分野に関心を持っていたことが窺えます。

生前は必ずしも高い評価を得ていたわけではなかったようで、晩年の歌集『随筆老のかたみ』には、「拙き絵を様々にかきためをきて／我が老の つたなきわさも 後の世に また顕はるる 時やあらなむ」という歌を詠み、後世での評価に期待を寄せていました。

二代目保川春貞は、幕末から明治にかけての京都画壇において、多様な表現を試みた絵師として記憶されるべき存在です。

代表作

* 翫雀死出の旅立（挿絵）

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