保美貝塚

保美貝塚（ほびかいづか）

愛知県田原市保美町平城に位置する保美貝塚は、縄文時代晩期から弥生時代にかけての複合貝塚です。三河湾に面した渥美半島の沖積平野にあり、豊かな自然環境の中で人々の生活が営まれていました。

概要

貝塚はA区、B区、C区の3つに区分されます。かつて山喜製糸の工場建設によりA区は失われましたが、残るB区とC区で発掘調査が行われました。1905年から1977年にかけて7度の調査が行われ、縄文晩期から弥生時代の土器をはじめ、人骨、貝類、哺乳類などの遺物が出土しています。

地理的条件と環境

保美貝塚は、渥美半島の三河湾に面した場所に位置します。この地域は、中央構造線の外帯に位置し、弓張山地の延長線上にあります。地形は低い山地、洪積台地、沖積地からなり、豊かな自然環境が形成されています。

貝塚は福江湾内部の沖積平野に面した洪積台地上にあり、当時は海岸線がすぐ近くまで迫っていたと考えられています。現在では、免々田川が台地の東側を流れ、福江湾に注ぎ込んでいます。

主な発掘調査

初期の調査

1922年：小金井良精らによる調査
八幡の森北側で埋葬人骨や土器棺が出土しました。遺跡の空間的な把握を試み、牙製耳飾、石冠、土偶などの特徴的な遺物も発見されました。
1941年：史前研究所などによる調査
八幡の森C貝塚で、耳輪を付けた子どもとの合葬人骨が出土しました。

昭和期の調査

1964年：渥美町教育委員会による調査
工場用地の拡大や豊川用水工事に伴い、A区、B区、C区で調査が行われました。
1965年：小林知生らによる調査
八幡の森南側とC貝塚北東部で調査が行われ、晩期前葉の土器が多数出土しました。

近年の調査

2009年：民間開発に伴う調査
縄文時代晩期後半の埋葬人骨や埋葬犬が発見され、貝層の詳細な調査が行われました。
2010年：民間開発に伴う調査
北陸地方に多い環状木柱列が東海地方で初めて発見され、注目を集めました。

出土品

出土品の中で最も多いのは土器であり、縄文時代後期後葉から晩期にかけての多様な土器が出土しています。その他、土偶、石器、骨角器、貝製品なども発見されています。

交通アクセス

豊鉄バス伊良湖本線「保美」バス停より徒歩5分
国道259号線 保美交差点北進約500メートル

まとめ

保美貝塚は、渥美半島の豊かな自然の中で、縄文時代から弥生時代にかけて人々が生活していた痕跡を示す貴重な遺跡です。数々の発掘調査によって、当時の人々の生活様式や文化、精神性などが明らかになりつつあります。特に、環状木柱列の発見は、古代の祭祀を知る上で重要な手がかりとなっています。今後の調査によって、さらに多くの発見が期待されます。

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