信任状

信任状の概要

信任状（しんにんじょう）は、外交官が他の主権国家に派遣される際に必要となる公式な文書です。この文書は、外交官を任命する国の元首から受け入れ国の元首に向けて発行され、自国を代表して行う発言についての信用を得るためのものです。一般的には、外交資格証明と呼ばれることもあります。この信任状は、大使が就任する際に必要不可欠なものであり、正式な捧呈式で受け入れ国の元首に提出されることによって、その任期が始まります。日本では、内閣がこの文書を発行し、天皇がその内容を認証します。

信任状捧呈式の手続き

大使が受け入れ国に到着すると、まず外務大臣との会談を行い、元首との面会の手配を行います。大使は、原本と写しの2種類の信任状を持参し、写しは到着時に外務大臣に手交されます。原本の信任状は正式な儀礼に従い受け入れ国の元首に直接捧呈されることになります。重要な点は、大使は信任状が正式に認証されるまでは業務を開始することができないということです。この認証日によって、外交団における序列も決まるため、信任状の取扱いは非常に重要な儀式とされています。入国した際には、外交特権が即時に付与されますが、業務のスタートはあくまで信任状の認証後となっています。

大使は、受け入れ国が提供する公用車や、場合によっては儀装馬車を利用し、衛兵の護衛を受けながら信任状捧呈式に向かいます。特に立憲君主制国家や議会制民主主義国家では、国家元首や総督が政府の助言に基づいて信任状を受け取ることを象徴するため、外務大臣が陪席することが一般的です。捧呈時には、大使は信任状を両手で持って渡します。

臨時代理大使について

外交関係が臨時の代理大使に留まる場合、信任状は派遣国の外務大臣によって作成され、受け入れ国の外務大臣宛てに発行されます。この場合、臨時代理大使は、その信任状を外務大臣に手交するだけで、元首の関与は必要ありません。また、臨時代理大使が任命される場合、軍の護衛や公用車の提供は通常行われません。

イギリス連邦における信任状

イギリス連邦内では、高等弁務官は信任状を持つことはありません。これは、英連邦の国家元首が英国の君主であり、派遣国と受け入れ国の国家元首が同一であるためです。そのため、派遣国の首相や総督が受け入れ国の首相や総督に対して非公式な紹介状のみを送付することとなります。一方、英連邦内の共和制国家では、派遣国の元首が信任状を発行し、受け入れ国の元首に受領されますが、これらの手続きは1950年から1951年にかけて標準化されました。

このように、信任状は外交の重要な部分を形成し、各国の外交官が正式に任命されるための必須の手続きです。信任状の発行と捧呈は、国家間の信頼関係や外交の重要性を象徴するものでもあるのです。

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