修禅寺物語

『修禅寺物語』の概要

『修禅寺物語』は、岡本綺堂によって書かれた戯曲であり、1幕3場から構成されています。この作品の背景には、鎌倉幕府の第二代将軍である源頼家の死があり、物語は伊豆の修禅寺での面作りの職人やその家族の人間模様を描いています。この作品は岡本の出世作であり、新歌舞伎の代表的な作品としても知られています。

制作背景

岡本は、修禅寺に伝わる古い面にインスパイアされてこの戯曲を創作しました。作品は歌舞伎の伝統を受け継ぎながらも、独自の新しさを持った内容となっており、1911年1月に『文芸倶楽部』で初めて発表されました。その後、同年5月には明治座で初演され、著名な役者である2世市川左団次によって演じられました。1928年には左団次の訪露公演にも取り上げられ、広く観客に知られることとなりました。さらに、この作品は海外にも翻訳され、多くの国で親しまれています。1918年には岡本自身の手で小説化され、映画化やテレビドラマ化も数多く行われています。

登場人物

• - 夜叉王: 面作りの職人。
• - かつら: 夜叉王の長女で、20歳。
• - かえで: 夜叉王の次女で、18歳。
• - 春彦: かえでの婿で、面作り職人。
• - 源頼家: 前鎌倉幕府の将軍で、23歳。
• - 下田五郎景安: 頼家に仕える若き武士。
• - 金窪兵衛尉行親: 鎌倉から来た武士。
• - 修禅寺の僧: 行親の家来。

あらすじ

第一場

物語は、元久元年7月18日の伊豆の修禅寺村から始まります。夜叉王の娘たち、かつらとかえでは紙作りをしています。かつらは父と共に暮らす日々に不満を抱き、貴人への仕えを夢見ています。かつらの望みを聞いた春彦と口論になるが、夜叉王が二人を仲裁します。そんな時に現れた源頼家は、半年間待たされた面を見せるよう訪れました。しかし、夜叉王は自信を持って面を作れない理由を説明し、頼家との緊張が高まります。その後、かえでが試作の面を持ち出し、頼家はその出来栄えに満足します。結果として、かつらは頼家に仕えることに。

第二場

同じ日に、頼家とかつらは桂川のほとりで過ごします。頼家は伊豆の穏やかさを称賛しますが、実際には権力闘争や命を狙われる恐怖を抱えていました。そんな中、かつらに「若狭局」の名を与えますが、金窪兵衛尉行親が現れ、頼家の行動を非難します。行親は前もって計画された暗殺を変更し、夜襲を企てます。

第三場

夜、夜叉王の家で物音が響き渡ります。春彦が夜襲の計画を聞き、急いで修禅寺に向かいますが、兵士たちに囲まれる。かつらは頼家のために危険を冒し、直垂を身に着けて敵の中に駆け込むが、負傷して戻ってきます。その行動は徒労に終わり、夜叉王はかつらの表情を見て新しい気づきを得ます。彼は面を打つことを再開し、かつらの顔を写し取り、新たな作品を作る決意をします。

派生作品

この戯曲は、岡本自身による小説化、映画、テレビドラマ、オペラなど多岐にわたる派生作品を生み出しています。特に映画版やテレビドラマは、当時の名優たちによって演じられ、今なお多くの人々に愛される作品となっています。

『修禅寺物語』には人間ドラマとしての深さがあり、面作りという技術と人の命、運命の関係を映し出す作品です。

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