倉敷天文台

倉敷天文台は、岡山県倉敷市に位置する、日本で最初の民間天文台として知られています。1926年（大正15年）に、実業家の原澄治が私財を投じて設立しました。この天文台の誕生には、京都大学教授の山本一清や、アマチュア天文家の水野千里らの熱心な働きかけがありました。

設立の背景

当時、日本の天文台はすべて官立であり、一般市民が天文観測に触れる機会は限られていました。山本一清は、気象条件の良い岡山県に天文台を設立したいと考えていましたが、純粋な学術施設への寄付は集まりにくい状況でした。そのような中、天文同好会の岡山支部が、原澄治を含む7名の設立委員を選出しました。

1926年4月、山本一清が倉敷で行った講演をきっかけに、原澄治は個人で望遠鏡を購入し、天文同好会に寄贈することを決意しました。イギリス製の望遠鏡は同年10月に倉敷に到着し、天文台設立へと大きく前進しました。

文化的遺産

倉敷天文台には、設立当初から使用されているイギリス・ホルランド社製のカルバー望遠鏡（32センチメートル反射望遠鏡）が設置されています。この望遠鏡は、2000年（平成12年）に倉敷市指定重要文化財（歴史資料）に指定されました。また、観望会が行われていたスライディングルーフ観測室は、2001年（平成13年）に国登録有形文化財（建造物）に登録されました。

観測室は2013年に、ライフパーク倉敷（倉敷科学センター）敷地内に移築されましたが、倉敷天文台と旧観測室は、「倉敷天文台と関連遺産」として、2023年度に日本天文遺産に認定されています。

原澄治・本田實記念館

天文台の敷地内には、1952年（昭和27年）に建設された5メートルドームを備えた建物があります。この建物は、設立者である原澄治と、後に数々の彗星や新星を発見した本田實を記念して、「原澄治・本田實記念館」として公開されています。

天文台の役割と本田實の功績

倉敷天文台は、設立当初から天文学の普及活動に力を入れてきました。特に、1941年（昭和16年）に着任した本田實は、天文台の観測実績向上に大きく貢献しました。本田は、12個の彗星と11個の新星を発見しており、その功績は広く知られています。

本田は1981年（昭和56年）以降、観測の中心を賀陽町（現・吉備中央町）に開設した星尋山荘に移しましたが、倉敷天文台では現在も、地元の市民や自治体の支援を受けながら、保存活動と普及活動が続けられています。

施設概要

• - 設置者: 公益財団法人倉敷天文台
• - 開設日: 1926年（大正15年）11月21日
• - 所在地: 岡山県倉敷市中央2丁目19-10
• - 公開日: 月・水・金曜日（観望会は日没後約2時間、記念館は13:00～17:00、無料、要予約）
• - 主設備: 31.5cm反射望遠鏡（主鏡は木辺成麿氏の研磨、赤道儀は旭精光研究所製）など

アクセス

JR山陽本線倉敷駅の南口から南へ徒歩約15分、岡山大学資源植物科学研究所の北側を通る道を西に進むと、ドームが見えます。また、市営の中央駐車場（倉敷市立美術館、倉敷市立図書館中央図書館に隣接）からは徒歩1分です。

参考文献

• - 公益財団法人倉敷天文台公式サイト
• - 倉敷市教育委員会文化保護課 - 天体望遠鏡(32センチメートル反射望遠鏡)
• - The Lit City Museum - 原澄治・本田實記念館
• - 山陽新聞 企画・特集 倉敷百景 - 54.倉敷天文台 - ウェイバックマシン
• - 星尋山荘

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