倍速液晶

倍速液晶とは

倍速液晶（または倍速駆動）とは、液晶ディスプレイにおける残像感を軽減するための技術です。従来の液晶ディスプレイでは、動きの速い映像を表示する際に残像が発生しやすいという課題がありました。この課題を解決するために開発されたのが倍速液晶技術です。

倍速液晶の登場

液晶ディスプレイは、薄型で省エネルギーというメリットから、テレビ受像機への応用が期待されていました。しかし、液晶分子の応答速度が遅いため、動画を表示する際に残像が発生しやすいという問題がありました。初期の液晶テレビでは、応答速度が50～100msecと遅く、スポーツ番組などの動きの速い映像では残像が目立ちました。

技術の進歩により液晶の応答速度は大幅に改善されましたが、それでも残像感は完全には解消されませんでした。液晶ディスプレイは、すべてのピクセルが同時に書き込まれ、次のフレームに置き換わるまで表示され続ける「ホールド表示」方式を採用しています。人間の目は、このホールド表示によって残像を感じてしまうのです。

倍速液晶の仕組み

この残像感を軽減するために、表示フレーム数を倍増させるのが倍速液晶の基本的な仕組みです。具体的には、従来の毎秒60フレーム表示を、倍の120フレームに引き上げます。これにより、ホールド時間が半分になり、残像感が軽減されます。

倍速液晶には、主に以下の2つの技術が用いられています。

1. フレーム補間

前後のフレームから動きの情報を算出し、その動きに合わせて中間フレームを生成する技術です。これにより、より滑らかな映像表現が可能になります。ただし、フレーム補間処理には技術的な難しさがあり、シーンによってはノイズが発生する可能性もあります。また、処理のために遅延が発生するため、ゲームなどには不向きな面もあります。

2. 黒挿入

フレームの間に黒い映像、または輝度を落とした映像を挿入する技術です。これにより、液晶のホールド表示を、CRT（ブラウン管）のようなインパルス表示に近づけ、残像感を軽減します。ただし、黒挿入により画面の明るさが低下したり、フリッカー（ちらつき）が目立つという欠点もあります。

メーカーによっては、これらの技術を組み合わせて使用している場合もあります。

倍速液晶の進化

倍速液晶は、2005年12月に日本ビクター（現JVCケンウッド）がディスプレイ業界で最初に開発・発売しました。その後、各社のテレビに搭載され、標準的な機能となりました。

さらに、ソニーは2008年11月に、表示フレーム数を従来の4倍にあたる240フレームまで引き上げた「4倍速液晶」を搭載した液晶テレビ「BRAVIA」を発売しました。

現在では、パソコン用のゲーミングモニターやスマートフォンの液晶にも倍速液晶が採用されており、より滑らかな映像表示を実現しています。

各社デモ設定

各社の倍速液晶搭載製品では、倍速効果を体験できるデモ設定が用意されています。店頭展示機だけでなく、一般販売されている製品でも設定可能です。

日本ビクター『EXE』: リモコンの「メニュー」ボタンから設定。
パナソニック『VIERA』: リモコンの「消音ボタン」長押し。
ソニー『BRAVIA』: 本体の「メニューボタン」長押し。
シャープ『AQUOS』: メニュー画面のリセット画面で方向キー操作。
東芝『REGZA』: リモコンの矢印キーを長押し。
三菱『REAL』: メニューからデモ設定可能。

まとめ

倍速液晶は、液晶ディスプレイの残像感を軽減し、より滑らかな映像表現を可能にする重要な技術です。テレビだけでなく、ゲーミングモニターやスマートフォンなど、幅広い分野で採用されており、私たちの映像体験を向上させています。

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