倭城

倭城（わじょう、ウェソン）とは

倭城とは、16世紀末の文禄・慶長の役（壬辰倭乱・丁酉再乱）の際に、日本軍が朝鮮半島の南部に築いた日本式の城（城砦群）を、朝鮮側が呼んだ名称です。日本国内ではあまり使われない呼称ですが、朝鮮半島では日本に対する蔑称を含んだ言葉として使われていました。

倭城の特徴

倭城は、日本の戦国時代に培われた築城技術が用いられており、石垣の技術は百済から伝わったものを基盤に、戦国武将の経験によって大幅に向上しました。そのため、当時の李氏朝鮮の城（邑城）と比較して防御力が非常に高く、実戦的であったことが特徴です。文禄・慶長の役の間、明・朝鮮軍の攻撃を受けても、一度も落城することはなかったとされています。

日本の城郭史においては、文禄・慶長期の築城技術を示す重要な遺構とされていますが、朝鮮半島では天守・櫓・城門などの建物は残っておらず、石垣や遺構だけが現存しています。また、撤退時や和平時に石垣の角部分が破壊されている箇所もあります。現在、一部の倭城は公園として整備され、残りは丘や林の中に石垣が残存している状態です。しかし、いくつかの倭城はすでに消滅しています。

倭城の分類

倭城はその性格によって大きく2つに分類できます。

1. つたいの城：明への侵攻を目的とした豊臣秀吉の滞在地（御座所）と兵糧補給路を確保するために建設された城です。釜山からソウルにかけて、ほぼ1日で軍隊が進軍できる距離ごとに建設され、後に義州まで建設されました。既存の朝鮮の邑城を修復するか、新たに建設されたものがあります。
2. 統治のための城：南海岸（釜山、蔚山、慶尚南道、順天、南全羅道）に築造された、占領地を統治するための城です。これらの地域では32ヵ所の調査が行われています。

倭城は、南海岸だけでなく内陸にも建設されたと考えられていますが、現在ではほとんど知られておらず、実情は不明です。

倭城の研究と現状

近年、倭城の研究が進んでおり、特に蔚山倭城は1万6千人の日本軍が40日間余りで築いたにもかかわらず、優れた防御力を備えていたことが明らかになっています。しかし、韓国国内にある30ヵ所以上の倭城が開発や環境変化によって損なわれていることが指摘されています。

研究者たちは、倭城が400年前の東アジア戦争を再構成する上で重要な文化遺産であると強調し、その保存を訴えています。また、学術シンポジウムでは、文禄・慶長の役に関する様々な側面からの研究発表が行われています。

文化財としての倭城

倭城は、韓国の城と同様に文化財保護法によって保護されています。文化財庁によって保存されており、歴史的・文化的にも重要な遺産として認識されています。

しかし、一部では復元作業が行われているものの、本来の石垣の傾斜を無視して垂直に積み直すなどの誤解が生じています。また、不必要な積み直しによって荒廃が進んでいるという懸念もあります。倭城は、その歴史的価値を保ち、適切な管理が必要です。

倭城を理由なく破壊した場合、財物損壊罪で法的処罰を受ける可能性があることが明示されています。

その他の倭城に関する情報

2019年には、倭城の現況地図である「朝鮮日本図説」が発見され、話題となりました。

文禄・慶長の役の際に改築された多大浦城址は、倭城とはされず、知世浦鎮城も倭城とはされていません。また、晋州望晋倭城は丁酉再乱の際に築造されたもので、現在は烽火台周辺に木柵はなく、頂上にあった城壁の推定地は第5景望晋山烽燧台となっています。

記録にはない永春倭城と昆陽倭城は、「泗川城の戦い」後に焼失しています。確認されているだけでも7ヵ所の倭城が滅失しており、農所、馬沙、東萊倭城は、国や政府機関の管理が必要とされています。

文禄・慶長の役と倭城

文禄・慶長の役の開戦直後、日本軍は補給拠点を設けるため、釜山倭城を築造しました。その後、平壌や漢城にも倭城が築かれましたが、朝明連合軍の反撃により、日本軍は慶尚南道沿岸に約20ヵ所の倭城を築造しました。

講和交渉が決裂し、再侵攻してきた日本軍は、以前築城した倭城を再占拠し、蔚山や順天まで戦線を拡大し、この地域にも新たな倭城を築城しました。

倭城の研究文献

倭城に関する研究は多く、特に以下の文献が参考になります。

倭城址研究会編『倭城 : 文禄慶長の役における日本軍築城遺跡』倭城址研究会、1979年。
『倭城の研究』シリーズ（城郭談話会、1997年〜2010年）。
織豊期城郭研究会編『倭城を歩く』サンライズ出版、2014年。

関連事項

日本の城一覧
登り石垣
文禄・慶長の役
倭館
豊臣秀吉

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