健康づくりのためのオタワ憲章

1986年に作成された「健康づくりのためのオタワ憲章」は、世界保健機関（WHO）が提唱した健康促進に関する重要な文書です。この憲章は、同年の11月にカナダのオタワで開催された第1回健康づくり国際会議で正式に採択され、その後の健康政策に多大な影響を与えました。

憲章の背景

オタワ憲章が誕生する背景には、1977年の第30回世界保健総会での決議があります。この会議は、2000年までに全世界の国民が健康的な生活を送ることができるよう、健康づくりの重要性を強調しました。この流れの中で、WHOの欧州事務局は健康づくりに関する具体的な戦略を策定しました。

健康の前提条件

オタワ憲章では、健康づくりに欠かせない8つの前提条件が定義されています。これらは以下の通りです。

1. 平和：健康な生活には平和が不可欠です。
2. 住居：適切な住居が健康の維持に寄与します。
3. 教育：十分な教育は健康促進に貢献します。
4. 食糧：栄養価の高い食事は健康を支えます。
5. 収入：経済的安定が健康へのアクセスを可能にします。
6. 安定した環境：環境の安定性が生活の質を向上させます。
7. 持続可能な資源：間に合った資源の利用が健康を保ちます。
8. 社会的公正と公平：すべての人が平等に健康を享受できる環境が求められます。

これらの条件は、1998年に「健康の社会的決定要因」としても整理され、さらにその理解が進みました。

3つの基本戦略

オタワ憲章では、健康づくりに向けた3つの基本戦略が強調されています。これらは以下の通りです。

- 推奨する（Advocate）：健康に関する利益を明確にし、健康的な環境を推進すること。
- 可能にする（Enable）：健康を実現するための機会や資源を確保し、個人や集団の潜在能力を引き出すこと。
- 調停する（Mediate）：異なる立場の利害関係者間の対話を促進し、健康づくりに向けた合意を目指すこと。

これらの戦略は、社会学に由来する概念を多く含んでおり、具体的には能力付与や政治的支持の必要性を示しています。

5つの活動領域

さらに、健康づくりのためには以下の5つの活動領域が明確化されています。

1. 保健政策の制定：包括的な保健政策を通じた多角的アプローチの推進。
2. 支援環境の整備：人々が健康的な選択を行いやすい環境を整えること。
3. 地域活動の強化：地域社会の自立を促進し、住民参加を推進する取り組み。
4. 個人スキルの開発：生涯を通じての情報リテラシー向上と教育による健康促進。
5. 医療の再設定：医療が健康促進に力を入れるための体制の見直し。

これらのアプローチを通じて、健康づくりは各行政機関の協力がなければ達成されないことが示されています。

憲章のシンボル

オタワ憲章のシンボルマークは、第1回国際会議で議論され、以来、WHOがこのマークを健康づくりの支持の象徴として利用しています。

オタワ憲章以降の活動

オタワ憲章は、その後も様々な国際的な宣言や憲章に影響を及ぼし、健康づくりの進展に寄与してきました。例えば、1988年のアデレード勧告や1991年のスンツバル声明などが挙げられます。

まとめ

オタワ憲章は、健康を実現するための基本的な考え方や戦略を提供するものとして、国際的な健康政策に多大な影響を与えてきました。その理念をもとに、各国はさまざまな取り組みを進めており、健康づくりは国際的な連携の下での重要な課題であることが強調されています。

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