偽史

偽史の概要

偽史とは、実際の事象とは異なる事実や歪められた歴史のことを指します。これは執筆者が意図的に創作したり、誤った解釈をすることによって成立します。この言葉は、1650年代以前から使用されており、特に、歴史的な事実に基づかない虚構の歴史を表す際に用いられます。特に、正当性のない国家が編集した史書は「偽史類」と呼ばれ、あくまで国家や民族の立場から作成されたものです。

偽史の定義と特徴

偽史の定義は多岐にわたり、信頼性のない情報に基づいた学説や、アカデミズムにまったく認められない虚構として扱うこともあります。例えば、原田実は「捏造された文書や疑似科学的データに基づく説」と述べ、長谷川亮一は「非学問的な方法論によって構築された虚構の歴史」と定義しています。ここで重要なのは、偽史が歴史的事実や文献の厳密な分析を無視し、恣意的に解釈される傾向にあることです。

偽史の類型

長谷川は偽史の具体例として、いくつかの類型を挙げています。代表的なものは以下の通りです。

1. 自民族起源論: 自民族の起源を他民族に結びつける説。
2. 超古代文明論: 古代に現代を超える文明が存在したと主張する説。
3. 陰謀論: 歴史が特定の組織による陰謀で動かされているとする考え。
4. 歴史修正論: 歴史的事実が虚構であるとされ、解釈が大きく偏っていること。

これらの偽史は、特に国家や民族のアイデンティティに強く根ざしたものと関連しています。

欧米における偽史の事例

アトランティスやムー大陸のような偽史は、欧米でも特に注目を集めてきました。アトランティスの伝説は、古代ギリシャの哲学者プラトンに起源を持ちます。一度、政治家イグネイシャス・ドネリーがアトランティスに関する説を著したことで、関心が高まりました。さらに、ジェームズ・チャーチワードがムー大陸について語ったことで、この関連の偽史が拡大しました。

これらの物語は、しばしば人種差別や民族主義的な視点を反映しています。白人優越主義の主張として使用され、植民地主義の正当化に利用されることもあります。

日本と中国における偽史

日本では、国学思想の成立以降、特に「日本人の起源」といったテーマに基づく偽史が創作されました。例として「日本人の祖先はユダヤ人である」という説や「源義経はジンギスカンであった」という主張があります。

一方、中国においては、偽史の概念は歴史的事実の解釈に大きく起因します。中華思想に基づいて、正統でない国家の歴史書が「偽史」として分類される傾向があります。こうした視点は、自己の正統性を主張し、他民族に対する優越性を示すためのプロバガンダとして機能することが多いです。

結論

偽史は歴史学における重要なテーマであり、文化的、社会的背景から見るとその影響は大きいです。国家や民族のアイデンティティ形成に寄与する一方、歴史認識の誤解を招き、誤った未来への指針を生む可能性も秘めています。この現象は、学術界のみならず一般社会においても無視できない問題です。

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