偽造品の取引の防止に関する協定

偽造品の取引の防止に関する協定 (ACTA)

概要

偽造品の取引の防止に関する協定、通称ACTA（Anti-Counterfeiting Trade Agreement）は、知的財産権の侵害を防止するために策定された国際条約です。この協定は、特に偽ブランド品や海賊版の拡散に対する新たな手法を提供することを目的としており、2011年にアメリカ、オーストラリア、カナダ、韓国、日本など8カ国によって最初に署名されました。

日本国内では、この協定は「偽ブランド品規制条約」や「海賊版拡散防止条約」としても知られており、その必要性や効果についてさまざまな議論が行われています。

協定の目的

ACTAの主な目的は、偽造品や著作権侵害の取引を国際的に取り締まるための法的枠組みを整えることにあります。具体的には、世界貿易機関（WTO）や世界知的財産機関（WIPO）、国際連合（UN）といった既存の国際機関の枠組みを活用し、新たな国際機関の設立も視野に入れています。

歴史的背景

この協定の構想は、日本の知的財産戦略本部が2005年に策定した「知的財産推進計画2005」に由来します。2006年からは、日米間の修正案の交換を経て、欧州連合やカナダなどが予備交渉に参加。正式交渉は2008年に始まり、2010年には大筋での合意が成立しました。

署名と批准

ACTAは、署名から6カ国によって批准されることで効力を持つことになります。2012年1月には、EUおよびその加盟国でも署名が行われ、最終的に31カ国が署名する結果となりました。日本は2012年にこの協定を批准した最初の国となりましたが、一部のEU諸国はインターネットの自由侵害への懸念から反対の声が強く、批准を否決した経緯もあります。

特徴

ACTAの特徴には、インターネットサービスプロバイダ（ISP）への監視義務が課せられることや、捜査機関への情報提供の強制、アクセスコントロールの回避による刑事罰規定などが含まれます。これにより、著作権侵害があった場合には迅速に対処できる体制が整備されることになります。

賛否について

ACTAは賛否が分かれる条約です。

賛成意見

支持者たちは、偽造品や海賊版の存在が知的財産権に与える悪影響を強調し、企業や創作者の利益を保護する必要があるとの立場をとっています。また、多くの著作権団体やビジネス団体が国際的な規制の強化を求め、ACTAの制定を支持しています。

反対意見

一方で、人権団体や市民団体からは、ACTAがインターネット上の言論の自由を侵害する恐れがあるとの懸念が示されています。特に、インターネット接続の強制的な切断や情報の事前検閲等が含まれる場合、個人のプライバシーや表現の自由が損なわれる危険性が指摘されています。

日本における手続き

ACTAの承認手続きは、2012年4月に参議院で始まり、その後衆議院でも賛成多数で可決されました。国内法の改正に関しては、技術的保護手段の範囲を拡大する必要があり、著作権法の一部が改正されました。

このように、ACTAは知的財産権を強化するための国際協定として進められていますが、その実施方法や影響については今後も議論が続くでしょう。

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