偽銘

偽銘の概念とその影響

偽銘（ぎめい）とは、ある美術品の銘が本来の作者とは異なる人物の名義で示されたものを指します。この現象は特に日本の古美術品に多く見られ、特に日本刀や陶器、茶道具などの分野で注意が必要とされています。古美術品の中には、まったくの偽物が存在し、その見分け方は玄人にとって常識とも言える重要なスキルです。

日本刀における偽銘

日本刀は、多くの場合、単にその由来でなく「正真」であることが重要視されます。これは、伝来の背景も大切ではありますが、実際には「本物」とされる刀の特徴を持つことが求められます。古刀から新刀までの日本刀には偽銘がしばしば施されており、見た目の不一致や特徴の差異によってその正当性を問い直す余地があります。

古刀と偽銘の見分け方

例えば、室町期以降の古刀や新刀、新々刀を鎌倉期の刀に偽装したものは、地鉄の質や姿から見破ることが可能です。特に大磨上無銘の古刀は、地鉄の特徴や匂い口が決定的に異なります。堀川国広が相州鍛冶の作を模写した際の違いも明白であり、鎌倉期の地鉄と新刀の地鉄では、その質感や色合いが歴然とした差を見せます。ここでは、新刀からの贋作である偽銘のリスクを挙げ、特に注意すべき刀工や流派も指摘します。

鑑定のポイント

美濃物や志津写し、現代の刀工による偽銘作には、地鉄や焼き具合、茎の形状など、重要なポイントがあります。具体的には、鎬地の鍛え目や帽子の焼き具合に注目することで、その正体を見極める手助けとなります。

現代における偽銘の状況

廃刀令以降、困窮した刀工たちの中には、偽銘を利用して生計を立てる者も出現しました。特に細田平次郎直光と呼ばれる偽銘師が知られ、彼は古刀から新刀の偽銘を施した作品を数多く残しました。現代でも、刀工の正真銘が広まっているため、偽銘を見抜くのは可能ですが、注意が必要です。

偽銘を見破るために

刀の偽銘や贋作を見極めるには、過去の文献や参考書を読み込むことが大切です。五箇伝や各時代の姿、地鉄の特徴、焼き刃の変化、茎における細部設定（姿、鑢目、棟仕上げ、目釘孔、銘の位置など）について熟知し、何度も正真正銘の刀と対峙することで、次第にその感覚を磨くことが可能です。

参考文献

最後に、偽銘刀について深く知りたい方には、福永酔剣と犬塚徳太郎による『偽銘刀の研究』をおすすめします。これを通じて、正しい識別技術を身に付け、真贋を見極める技術が向上することが期待されます。

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