備前長船兼光

備前長船兼光について

備前長船兼光（びぜんおさふねかねみつ）は、備前国に住んでいた著名な刀工で、特に南北朝時代に活躍しました。一般的にはこの時期の刀工を指しますが、実際には何人かの兼光が存在しています。彼の作品は、精巧かつ華麗であり、重要文化財としても評価されています。

兼光の系統

兼光には複数の門徒が存在し、それぞれ異なる時代に活動していました。最初の兼光は文永年間（1264年-1275年）頃の人物で、岡崎五郎入道正宗の弟子でもあります。彼は「大業物20工」の中の一人であり、鉄砲切りや石切りなど名作を制作しました。しかし、後の時代と比べるとその作刀はあまり残っていません。

次に紹介する延文年間（1356年-1361年）頃の兼光は、長船長光の孫で、作風に幅があることから一代二代の説が存在しますが、現在は一代とされることが多いです。彼の刀は豪壮さが特徴で、「波遊ぎ兼光」や「鉋切り兼光」といった異名があります。この兼光は、足利尊氏の御用鍛冶であったとも言われています。

その後、応永年間（1394年-1428年頃）に登場した三代兼光や、長禄年間（1457年-1461年頃）、天文年間（1532年-1555年頃）の兼光も作刀を残しています。特に、最上大業物14工に数えられる兼光が一般的に知られています。

兼光の作風

二代兼光の作風は初期と後期で分かれています。初期には、片落ち互の目や丁子刃を採用し、後期には大湾れ互の目乱れの刀が多く見られます。また、初期の作柄は三作帽子と呼ばれ、切先の刃文は湾ており、後期は身幅が広い大太刀造りの作品が増えました。特に、先が尖る「兼光帽子」は彼の刀工としての特徴の一つです。

重要文化財たち

兼光の作品には、重要文化財に指定された刀がいくつかあります。例えば、「太刀 銘備前国長船住兼光 元弘三年八月日」や「太刀 銘備前国長船住兼光 建武二年七月日」などがその代表例です。これらの刀は、今でも個人や美術館で大切に保管されていますが、摩耗や盗難の危険も色濃く、特に延文年間の刀が戦後に行方不明になったものもあります。

史実と伝説

兼光にまつわる伝説も多く、特に足利尊氏との関係が深く語られています。『備陽国志』において、尊氏が兼光から名刀を献上されたというエピソードや、彼が尊氏に刀を贈呈して甲冑をも斬れる作品を作ったといった話が残っています。これらの物語は彼の名声を後世に伝えていると同時に、兼光の刀が持つ力や美しさを物語っています。

このように備前長船兼光は、彼の刀工としての才能と歴史的背景から、多くの文化的意義を持つ存在として今も語り継がれています。

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