催吐薬

催吐薬（emetics）は、体内に摂取された有害物質を速やかに除去するために、嘔吐を誘発させることを目的とした医薬品です。主に、誤って異物や毒物を飲み込んでしまった緊急時における対処法として用いられます。催吐薬には、経口投与されるものと、注射によって投与されるものがあります。

作用機序の違いにより、催吐薬は大きく二つに分類されます。一つは、中枢性催吐薬と呼ばれるもので、脳の延髄に存在する嘔吐中枢を直接刺激することで催吐作用を発揮します。代表的な薬剤としては、エメチン、アポモルヒネ、ブロモクリプチンなどが挙げられます。これらの薬剤は、血管脳関門を通過して中枢神経系に作用し、強力な催吐効果をもたらします。

もう一つは、末梢性催吐薬と呼ばれるもので、消化管を刺激することで催吐反射を引き起こします。代表的な薬剤としては、硫酸銅や塩化亜鉛などが挙げられます。これらの薬剤は、消化管の粘膜を刺激し、迷走神経を介して嘔吐中枢に信号を伝達することで催吐作用を発揮します。

家庭における応急処置として、トコンシロップが化学物質や毒物の誤飲時に使用されてきた歴史があります。しかし、トコンシロップの使用は、誤飲から30分から90分以内であれば効果が期待できるものの、潜在的な副作用や、嘔吐を避けるべき状況で使用されるリスクも存在します。そのため、家庭で催吐薬を使用する際には、事前に医師や薬剤師、または緊急医療スタッフに電話などで相談し、指示に従うことが強く推奨されます。

特に、以下のような場合には、催吐薬の使用は禁忌とされています。

意識がない、または意識が朦朧としている場合
強酸や強アルカリなどの腐食性物質を飲み込んだ場合
石油製品（灯油、ガソリンなど）を飲み込んだ場合
呼吸困難がある場合
* けいれんを起こしている場合

これらの状況下で催吐薬を使用すると、かえって症状を悪化させる可能性があります。誤飲事故が発生した際には、まず落ち着いて状況を把握し、専門家の指示を仰ぐことが最も重要です。

注意

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスを提供するものではありません。催吐薬の使用に関しては、必ず医師や薬剤師に相談し、指示に従ってください。自己判断での使用は、健康被害を招く可能性があります。

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