働事

働事の解説

能楽における働事（はたらきごと）は、演者の所作と囃子の音楽的要素が組み合わさった演技の一部を指し、その所作は特定の表意的・具象的な意味を有しています。舞事と似た部分もありますが、働事には多くの参加者が必要とされ、一般的にはより活発で力強い演出が求められます。

働事の種類

働事は多様な形式を持ち、主に「カケリ」（翔）や「イロエ」、さらには「斬組」と「立廻り」に分類されます。ここでのカケリは、武将の霊や精神的な苦悩を表現するもので、独自のリズムを持つスタイルで演じられます。

カケリ（翔）

カケリは、精神の昂揚により激しく動き回る演技で、古典的な作品「屋島」や「桜川」では、このスタイルが特に顕著に見られます。音楽的には通常、一段二節で構成され、鼓がノリ拍子を刻み、笛はアシライの音が響きます。このスタイルの特徴は、急激なテンポの変化にあります。

イロエ

イロエは、演者が舞台を静かに一周する演技であり、表意的な内容が少なく、主に後続のパフォーマンスへの前振り的役割を果たします。無段一節で成り立ち、鼓や笛のリズムもシンプルです。このスタイルも男女問わず、さまざまな作品に登場します。

斬組

斬組では、多人数の武士が中心となり、パフォーマンスとして斬りあいを繰り広げます。ここでは、シテやワキが重要な役割を果たし、視覚的な偉業と迫力を演出します。無段一節の形で、音楽もノリ拍子が基本となります。

立廻り

立廻りは、各曲ごとに異なる所作を演じるスタイルであり、特定の型がなくバラエティに富んでいます。共通の特徴を持たないため、多様な表現が可能です。このスタイルの中でも大小立廻りや太鼓入り立廻りが見られます。

太鼓物

働事には、楽器として太鼓が用いられ、舞働や打合働、イノリ、立廻りが含まれる形で展開されます。特に、舞働は異類のシテが神秘的な力を発揮する劇的なパフォーマンスを有し、強い印象を与えます。

舞働

舞働は、神や異類が力強く活動する場面を描き、演技は通常、段数が重要です。演じられる多くの作品において、特に白頭の小書がついたシテによる演出は特別な格調を示します。

打合働

打合働は、主にシテとツレまたはワキとの一対一の争いを描いています。演出上のスピードが重要で、舞働に類似したものでありながら、より早いテンポが特徴です。

イノリ

イノリは、怨霊などの怒りをテーマにした闘争を描いており、特定の作品にしか見られない貴重なスタイルです。特殊な演出で編成され、三段四節で構成されます。

狂言の働事

狂言でも働事が取り入れられており、特に「舞働」と「責メ」、「カケリ」が適用されています。これらのスタイルは、能楽の要素を模倣するようなもので、狂言特有のストーリー性が加わります。

結論

働事は能楽において、演者の技術や表現力を試す重要な要素です。多様なスタイルや形態が存在し、各作品の特性が反映されています。能楽の理解を深めるためにも、働事の各種を観賞することは非常に有意義です。

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