元木由記雄

ラグビー界のレジェンド、元木由記雄氏の軌跡

元木由記雄氏（1971年8月27日生まれ）は、大阪府東大阪市出身の元ラグビー選手にして、名将と呼ばれる指導者です。現役時代はセンターとして活躍し、日本ラグビー界に多大なる貢献を果たしました。その卓越した才能と類まれな精神力は、多くのラグビーファンを魅了し続けています。

生まれながらのアスリートからラグビー選手へ

幼少期から生駒山で鍛え上げられた体格と、類まれな運動能力は、周囲の注目を集めました。中学時代、先輩に誘われたことがきっかけでラグビーを始めると、その才能はすぐに開花。大阪工大高校時代には、「将来の日本代表を背負って立つ逸材」と評され、高校2、3年と2年連続で高校日本代表に選出されるなど、早くからその名を馳せました。当時、花園で活躍する同級生からサインを求められるほどの存在感を持っていました。

大学、社会人時代での活躍

高校卒業後、明治大学に進学。1年生から試合に出場し、3度の大学選手権優勝に貢献。4年時には主将としてチームを牽引しました。

1994年、V7最後のシーズンを迎えた神戸製鋼へ入社。1年目からレギュラーに定着し、チームの中心選手として活躍しました。チームの連覇が途切れた後も、1999年度と2000年度には全国社会人大会と日本選手権で優勝を果たすなど、その実力を遺憾なく発揮しました。

トップリーグ元年（2003-2004シーズン）には、全11試合にフル出場し、神戸製鋼コベルコスティーラーズを初代王者に導き、自身もMVPとベスト15に選出される快挙を成し遂げました。翌シーズンもベスト15に選ばれ、その実力は誰もが認めるものとなりました。

日本代表としての活躍と苦悩

19歳という若さで日本代表に選出され、1991年のアメリカ戦で初キャップを獲得。1996年には英国バーバリアンズにも選ばれ、マレーフィールドでスコットランドと対戦するなど、国際舞台でも活躍しました。

日本代表キャップ数は79（2013年6月1日時点で小野澤宏之選手に更新されるまで最多記録）を誇り、「鉄人」「ミスターラグビー」と称されるほど、日本のラグビー界に大きな足跡を残しました。日本代表としてW杯4大会連続出場を果たした選手は、当時彼を含めてわずか2名でした。

日本代表キャプテンを務めた経験や、2003年に患った原因不明のパニック症状など、数々の困難を乗り越えてきた元木氏。その経験から得られた教訓は、指導者としての彼をさらに成長させました。

指導者としてのキャリア

2010年に現役を引退した後も、ラグビー界への貢献は続きます。ラグビーU20日本代表ヘッドコーチや神戸製鋼コベルコスティーラーズのアドバイザーなどを経て、2013年に京都産業大学ラグビー部のバックスコーチに就任。2015年にはヘッドコーチ、2020年にはGMに就任するなど、指導者として幅広く活躍しました。2019年には、W杯日本大会アンバサダーとして大会のPRに尽力しました。

強靭な精神力と繊細な一面

「マイク・タイソン似」と言われる強面とは裏腹に、内面は優しく繊細な一面も持ち合わせています。高校時代には、花園での優勝、日本代表になるため、1年間毎日、直径約3メートル、自分の背丈ほどの深さの穴を掘るという過酷な鍛錬を続けました。

彼のプレーの特徴は、1対1での強さと、相手の骨が軋むほどの強烈なタックルでした。その強さの源泉は、人一倍の負けず嫌いと、チームへの責任感です。常に全力でプレーし、基本プレーを徹底することで、チームを勝利に導きました。

元木氏の人生は、努力と挑戦、そしてその先に待つ大きな成功と苦悩の物語です。その経験は、多くの後進たちに勇気を与え続けています。

受賞歴

2003-2004シーズン: トップリーグ年間MVP、ベストフィフティーン
2004-2005シーズン: ベストフィフティーン

著書

* もっと強く、もっと愚直に（講談社）

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