先進中型短距離離着陸輸送機計画

先進中型短距離離着陸輸送機計画 (AMST)とは

先進中型短距離離着陸輸送機計画（Advanced Medium STOL Transport, AMST）は、1970年代にアメリカ合衆国で立案された、革新的な短距離離着陸（STOL）能力を持つ輸送機を開発するための計画です。

計画の概要

この計画では、ボーイングが開発したYC-14と、マクドネル・ダグラスが開発したYC-15という2つの試作機が製造され、競争試作が行われました。しかし、1979年にAMST計画自体が中止となり、両機ともアメリカ軍に正式採用されることはありませんでした。

ただし、YC-15の開発で得られた技術や設計思想は、後に開発されたC-17輸送機に活かされることになります。

開発の経緯

1970年代、アメリカ軍は、既存の輸送機よりも短い滑走路で運用できる、より柔軟性の高い戦術輸送機の必要性を認識しました。そこで、短距離離着陸能力を備えた次世代輸送機の開発計画が策定され、マクドネル・ダグラスとボーイングがこの計画に参加し、それぞれ独自の設計に基づいた試作機を開発することになったのです。

YC-14

ボーイングが開発したYC-14は、双発エンジンを搭載した高翼配置の機体です。直線翼を採用し、USB（Upper Surface Blowing）方式と呼ばれる、エンジンからの排気を翼上面に沿って流すことで揚力を増大させる技術を採用していました。

YC-15

一方、マクドネル・ダグラスが開発したYC-15も高翼配置で直線翼を採用していますが、胴体は既存のC-130輸送機から流用されていました。YC-14よりも保守的な設計で、4発エンジンを搭載し、EBF（Externally Blown Flaps）方式と呼ばれる、一種の推力偏向技術によって揚力を生み出す仕組みでした。

計画中止とその後の影響

AMST計画は最終的に中止となりましたが、この計画で開発された技術やコンセプトは、その後の航空機開発に大きな影響を与えました。特に、YC-15で得られた知見は、大型輸送機C-17の開発に貢献し、C-17はアメリカ空軍の主力輸送機として長年にわたり活躍しています。

関連項目

YC-14
YC-15
C-17 - YC-15とは異なり後退翼を備える
飛鳥 (航空機)
An-72
An-74

参考文献

航空ファン別冊 No.32 アメリカ軍用機1945～1986 空軍編 文林堂

外部リンク

boeing.com

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