光のほうへ

映画『光のほうへ』解説

『光のほうへ』（原題：Submarino）は、デンマークの作家ヨナス・T・ベングトソンの小説『SUBMARINO』を原作とした、2010年公開のデンマーク・スウェーデン合作映画です。監督はトマス・ヴィンターベアが務め、主演はヤコブ・セダーグレンとペーター・プラウボーが演じています。

あらすじ

物語は、幼い頃に母親から育児放棄された兄弟の悲劇から始まります。彼らは、まだ幼い赤ん坊の弟の世話をしながら、貧困と孤独の中で生きていました。しかし、ある日、赤ん坊は突然亡くなり、兄弟の心に深い傷を残します。

時は流れ、大人になった兄ニックは、恋人との別れをきっかけに暴力事件を起こし、刑務所に入っていました。出所後、シェルターで生活する彼は、街でかつての恋人の兄イヴァンと再会します。イヴァンは精神を病んでおり、ニックは彼のためにシェルターで暮らす女性ソフィーを引き合わせますが、悲劇が起こります。ニックが外出中に、イヴァンがソフィーを殺害してしまうのです。

一方、弟は、妻を交通事故で亡くし、息子マーティンを一人で育てています。しかし、麻薬中毒から抜け出せずに生活は困窮し、息子とも引き離されそうになります。そんな中、母親が亡くなり、遺産を受け継いだ弟は、麻薬に手を染め、やがて逮捕されてしまいます。

逮捕されたニックは、ソフィー殺害の容疑で黙秘を続けますが、刑務所の中庭で弟と再会します。互いの境遇を嘆きつつ、弟は兄への慕情を口にし、別れを告げるかのように去っていきます。その後、ニックは右手の怪我が悪化し入院しますが、弟が自殺したことを知ります。ショックを受けたニックは、弁護士に事件の真相を語り始めます。

釈放されたニックは、弟の葬儀に参列し、マーティンと再会します。ニックはマーティンに、その名前の由来を語ると約束し、マーティンはニックに、亡き父の言葉を伝えます。その言葉にニックは涙を浮かべ、マーティンはニックの手を握ります。物語は、幼い頃の兄弟が洗礼の真似事をした際に、赤ん坊に「マーティン」と名付けたエピソードへと繋がります。

キャスト

ニック：ヤコブ・セーダーグレン
ニックの弟：ペーター・プラウボー
ソフィー：パトリシア・シューマン
イヴァン：モーテン・ローセ
マーティン：グスタフ・フィッシェル・キャエルフ

作品の評価

本作は、第60回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品され、高い評価を受けました。また、デンマークのアカデミー賞であるロバート賞では、作品賞や主演男優賞を含む14部門にノミネートされ、助演男優賞など5部門を受賞しています。

映画が描くテーマ

この映画は、家族の絆、孤独、そして絶望からの再生というテーマを深く掘り下げています。幼少期のトラウマが、その後の人生にどのような影響を与えるのか、また、どんなに過酷な状況でも、人は希望を捨てずに生きることができるのかを問いかけています。

兄弟の過酷な運命を通して、人間の心の闇と光を描いた、見応えのある作品です。

その他

原作小説『SUBMARINO』は、映画公開後の2010年9月にスウェーデンの文学賞「ペール・オーロフ・エンクイスト文学賞」を受賞しています。

外部リンク

デンマーク語）'>公式ウェブサイト（デンマーク語）
公式ウェブサイト（日本語）
光のほうへ - allcinema
光のほうへ - KINENOTE
オールムービー（英語）'>Submarino - オールムービー（英語）
IMDb（英語）'>Submarino - IMDb（英語）
Submarino - TCM Movie Database（英語）
* Rotten Tomatoes（英語）'>Submarino - Rotten Tomatoes（英語）

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