入営

入営：兵役への編入と軍務開始

入営とは、兵役義務を負う者、または志願兵が、兵役につくために初めて兵舎に入ることを意味します。これは、軍隊生活の始まりであり、兵役期間中の職務への服従がここから始まります。

大日本帝国陸軍・海軍における入営

大日本帝国においては、陸軍と海軍で入営の様相がやや異なっていました。海軍兵は、まず海兵団に入団することから始まりました。一方、陸軍の現役兵は入営し、在営期間中に軍事上の職務に従事しました。入営時期は、陸軍大臣と海軍大臣によって決定されました。

入営時期と兵科による差異

一般現役兵の入営時期は、通常、徴集年の翌年1月10日とされていましたが、兵科や師団によって異なる場合がありました。例えば、近衛師団や一部師団、台湾や独立守備隊の歩兵は、12月1日と6月1日の年2回に分けて入営しました。また、兵科によっても異なり、輜重兵特務兵は4～5期に分けて入営し、看護兵や工兵の入営時期もそれぞれ異なっていました。

入営に際しては、必需品を入れた袋を持参しました。陸軍ではこれを「奉公袋」、海軍では「応召袋」と呼んでいました。これらの袋には、兵役生活に必要な衣類や身の回り品が詰め込まれていました。

入営延期の制度

特別な事情により入営を延期できる制度もありました。例えば、同一家族から2名以上が同時に現役兵として在営し、家事に支障がある場合は、1人の在営期間中は他者の入営を延期することが認められました。また、疾病や不可抗力により入営が困難な場合も、最長31日以内（兵科によって期間が異なる場合あり）の入営延期が認められていました。

このような入営延期制度は、兵役義務者への配慮を示すものでした。しかし、延期期間は限られており、やむを得ない事情がない限り、原則として入営は義務付けられていました。

入営者職業保障法

兵役による経済的負担を軽減するため、1931年には「入営者職業保障法」が制定されました。これは、入営によって職を失うことを防ぎ、入営者とその家族の生活を守ることを目的とした法律でした。この法律は、入営者の職業を保障し、復員後の就職支援を行うことで、社会復帰をスムーズにする役割を果たしました。

まとめ

入営は、兵役義務者にとって人生における大きな転換期でした。入営時期や手続き、必要な持ち物、そして入営延期制度など、様々な要素が複雑に絡み合い、個々の兵士の状況や所属部隊によって異なっていました。入営者職業保障法のような制度も整備されつつ、国家と個人の間で様々な調整が行われていたことが分かります。この制度は、大日本帝国の兵役制度の一端を示す重要な要素と言えるでしょう。

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