全国企業短期経済観測調査

全国企業短期経済観測調査（日銀短観）とは

全国企業短期経済観測調査、通称「日銀短観」は、日本銀行が四半期ごとに公表する統計調査です。この調査は、日本の経済状況を把握する上で非常に重要な役割を果たしており、国内外の市場関係者から高い注目を集めています。その速報性と調査対象の多さから、「Tankan」という言葉で海外でも広く知られています。

発表されるデータは、日本の経済動向を測る上で重要な手がかりとなり、株価や為替レートなどの市場に大きな影響を与えることがあります。内閣府が発表する月例経済報告と並び、経済の現状と動向を把握するためだけでなく、中長期的な経済構造を分析する上でも欠かせない経済統計の一つとされています。

調査の概要

日銀短観は、全国の資本金2000万円以上の民間企業約21万社から、約1万社を抽出して実施されます。調査内容は、企業の業績や業況、設備投資額、雇用など多岐にわたり、計数データと企業の心理状態の両側面から、過去の実績と今後の見通しを把握します。特に、景気が良いと答えた企業の割合から、悪いと答えた企業の割合を差し引いて算出される業況判断指数（DI）は、株式市場に大きな影響を与えることがあります。

日本経済団体連合会（経団連）の調査によれば、日銀短観は四半期GDP速報などと並び、企業経営者が最も重視する経済統計の一つに数えられています。2004年3月の調査までは、従業員数を基準に調査対象企業を選定していましたが、ベンチャー企業の成長を背景に、資本金を基準とする調査に変更されました。この変更により、調査対象企業数は約2000社増加しました。

調査の目的

日銀短観の主な目的は、通常の調査では把握が難しい、企業が抱く「好況感」や「経営マインド」などの動向を把握し、金融政策の適切な運営に役立てることです。企業が経済状況をどのように捉え、どのような行動をとるのかを把握することで、金融政策の判断に必要な情報を提供します。

調査方法

調査はアンケート方式で実施され、企業は書面またはオンラインで回答します。質問項目は大きく分けて、「判断項目」と「計数項目」の二つに分類されます。

判断項目：企業の主観的な判断を問う項目で、例えば以下のような質問があります。

質問：貴社の業況についてどのように判断しますか

回答：1. 良い　2. さほど良くない　3. 悪い

このような質問に対する回答から、業況判断指数（DI）が算出されます。DIは、景気が良いと回答した割合から悪いと回答した割合を差し引いて計算されます。

計数項目：企業の売上高や預金・現金などの実績値や計画値を問う項目です。これらの計数データは、企業の活動状況を客観的に把握するために用いられます。

調査の時期と公表時期

調査は、3月、6月、9月、12月の各月下旬に実施されます。調査結果は、それぞれ翌月の4月、7月、10月の初旬、および12月中旬に公表されます。これらの発表時期は、市場関係者にとって重要なイベントとして注目されています。

まとめ

日銀短観は、企業の景況感や経済活動の動向を把握するための重要な統計調査であり、国内外の市場関係者や政策立案者にとって不可欠な情報源です。企業の経営判断、市場動向の予測、そして金融政策の運営において、そのデータは広く活用されています。


参考文献
藤井剛(2008=2017)『詳説 政治・経済研究』山川出版社

外部リンク
短観：日本銀行 Bank of Japan

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