全国政治協商会議香港地区委員

全国政治協商会議香港地区委員、通称「特邀香港人士」は、中国共産党を含む政治諸党派と各界の統一戦線組織である中国人民政治協商会議（全国政協）の香港代表です。

全国政協には全国委員会と地方委員会が存在しますが、香港特別行政区には地方委員会がないため、全国委員会が香港から委員を招聘する形式をとっています。この委員の選出は任命制であり、香港域内での選挙は行われていません。つまり、香港の有権者による直接的な選出ではなく、中国政府によって選ばれるということです。

第10期全国政協では、122名の「特邀香港人士」が任命されました。さらに、他の選出枠から選出された香港出身者も約50名おり、2005年2月には、董建華氏を含む8名の香港人が追加で任命されました。これにより、香港出身の委員は合計で約180名に達しました。これらの委員は、香港の親政府派、具体的には左派や資本家、著名人などが中心となっています。これは、中国政府が香港における影響力を維持・強化しようとする意図の表れとも解釈できます。

特筆すべきは、霍英東氏（1993年就任）と董建華氏（2005年3月就任）が、全国政協副主席に就任したことです。これは、香港出身の委員の中でも、特に影響力のある人物が中国政府の重要な役職に就いたことを示しています。ただし、霍英東氏は2006年10月に逝去されています。この事実からも、全国政協香港地区委員が、単なる名誉職ではなく、香港と中国本土の関係において重要な役割を担っていることがわかります。

全国政治協商会議香港地区委員は、中国政府と香港を結びつける重要なパイプ役であり、中国政府の意向を香港社会に伝える役割を担っています。同時に、香港社会の意見や要望を中国政府に伝える役割も期待されていますが、その実効性については議論の余地があると言えるでしょう。委員の選出方法が任命制であることからも、中国政府の影響力が強く、香港の民意を十分に反映しているとは言い難い状況です。

この委員制度は、香港における政治的な現状と、中国本土との関係性を理解する上で非常に重要な要素であり、今後もその動向が注目されます。

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