全国車いすマラソン

全国車いすマラソン（篠山）

全国車いすマラソン（篠山）とは、かつて兵庫県丹波篠山市を舞台に、毎年秋に開催されていた国内有数の車いすマラソン大会です。1988年に産声を上げ、長年にわたり日本の車いす陸上競技界において重要な位置を占めていましたが、参加者の減少などを理由に、2022年をもってその歴史に幕を下ろしました。

大会の始まり

この大会は、1988年に兵庫県で開催された「第1回全国健康福祉祭」、通称「ねんりんピック」の記念事業の一つとして企画されました。このねんりんピックは、高齢者の健康増進や生きがいづくりを目的とした様々なイベントが全国規模で開催されるものですが、その初回の兵庫大会において、高齢者スポーツや文化行事と並んで、第1回目の全国車いすマラソン大会が開催されることになったのです。これが、後に四半世紀以上にわたって開催される篠山の車いすマラソンの礎となりました。

国内における位置づけ

全国車いすマラソン（篠山）は、国内の車いすマラソン大会の中でも特に重要な存在でした。その理由の一つは、日本陸上競技連盟の公認を受けた本格的なコースで、国際規格であるフルマラソン（42.195km）のレースを実施していた点にあります。当時、国内で公認コースを用いてフルマラソンを開催する車いすマラソン大会は、この大会と大分県で開催される大分国際車いすマラソン大会の二つに限られており、多くのトップアスリートや記録更新を目指す選手にとって、欠かせない大会の一つでした。

コースと種目

大会で使用されたコースは、「篠山城跡マラソンコース」として日本陸上競技連盟の公認を受けていました。歴史的な城跡周辺をスタート・フィニッシュ地点とするこのコースは、2005年に一部レイアウトが変更されています。主要な種目としては、本格的なフルマラソン（42.195km）と、比較的参加しやすいハーフマラソン（21.0975km）が設定されており、国内外から幅広いレベルの車いすランナーが参加し、熱戦を繰り広げました。

大会の終焉

長年にわたり開催されてきた全国車いすマラソン（篠山）でしたが、近年は参加者数の減少という深刻な課題に直面していました。この状況を受け、運営側は大会の継続について検討を重ねましたが、参加者減少の流れを止めることは困難でした。結果として、2019年の大会を最後に、大会の看板種目であったフルマラソンの部が廃止されることが決定しました。その後、より多くの人が気軽に参加できるファンラン形式での継続が一時的に検討された時期もありましたが、最終的には大会自体の運営が難しくなり、2022年に全国車いすマラソン（篠山）の廃止が正式に発表され、30年以上の歴史に終止符が打たれることとなりました。

未来への刷新

本大会の廃止を受けて、兵庫県は車いすロードレースの新たな大会形式を模索しています。現在、「兵庫車いすロードレース」（仮称）として構想されている新大会は、これまでの丹波篠山市一か所に限定せず、兵庫県内の様々な県立公園などを舞台に、年1回、開催地を持ち回りで実施する方針が示されています。これは、より多くの地域で車いすスポーツに触れる機会を提供し、県全体の障害者スポーツ振興につなげることを目的としています。

大会を支えた人々

全国車いすマラソン（篠山）は、長きにわたり、兵庫県、丹波篠山市、そして財団法人（現・公益財団法人）兵庫県障害者スポーツ協会の共催というかたちで運営されてきました。多くの関係者やボランティアの協力によって支えられ、多くの車いすアスリートにとって目標となる大会であり続けました。

この大会の歴史は終わりましたが、その精神は新たな取り組みへと引き継がれようとしています。

もう一度検索