全国高等学校野球選手権信越大会

信越大会（しんえつたいかい）

信越大会は、日本の高校野球黎明期から戦後にかけて存在した地方大会の一つです。具体的には、1931年（第17回大会）から1957年（第39回大会）まで、全国中等学校優勝野球大会およびその後継である全国高等学校野球選手権大会の予選として開催されました。ただし、第二次世界大戦中の1941年（第27回大会）は、全国大会が中止となり地方大会も府県単位での開催にとどまったため、長野・新潟両県を対象とする信越大会としては開催されませんでした。この例外を除き、この期間は長野県と新潟県の代表校を決める重要な舞台でした。

この大会が成立する前の1930年（第16回大会まで）は、山梨県、長野県、新潟県を対象とした「甲信越大会」と、神奈川県、静岡県を対象とした「神静大会」が行われていました。しかし、1931年の第17回大会を機に地区割りが見直され、山梨県が神奈川・静岡と組む形で「甲神静大会」を編成。これに伴い、長野県と新潟県が新たな地域大会として「信越大会」を組織することになりました。これが信越大会の始まりです。

信越大会は、その歴史の中で計22回開催されました。この大会の最も特筆すべき点は、驚異的なまでに長野県勢が強さを発揮したことです。開催された全22回において、長野県代表校が優勝旗を手にしました。対照的に、新潟県勢は一度も優勝を果たすことができませんでした。複数の県によって構成される地方大会で、特定の県勢が全ての開催回で優勝し、そのまま大会が消滅するという事例は他にも存在しますが、信越大会における長野県勢の22回連続優勝は、そのような事例の中でも最も多い記録として知られています。

また、大会形式も特徴的でした。1949年（第31回大会）までは、長野県と新潟県のそれぞれの予選を勝ち抜いた上位2校ずつ、合計4校が信越大会に進出し、準決勝方式で優勝校を決めていました。これが1950年（第32回大会）からは、各県予選の上位4校ずつ、合計8校が出場する形式に変更され、準々決勝から始まりました。このような大会形式であったこともあり、開催された22回のうち、実に17回もの決勝戦が長野県勢同士の対戦となりました。新潟県勢にとっては、決勝進出すら困難な状況が続いたと言えます。

信越大会は、1957年（第39回大会）をもってその歴史に幕を閉じました。その翌年の1958年（第40回大会）から、全国高等学校野球選手権大会では原則として「一府県一代表」制度が導入されたためです。この制度の下で、長野県は単独で代表校を決定する県大会を持つことになりました。一方、新潟県は、当初は単独代表とはならず、1959年（第41回大会）から富山県と新たな合同予選である「北越大会」を編成することになりました。このようにして、長野県と新潟県の合同予選としての信越大会は廃止されました。長野県勢による圧倒的な強さを見せ続けた信越大会は、短いながらも日本の高校野球史に独特な足跡を残しました。

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