全国高等学校野球選手権岩手大会

全国高等学校野球選手権岩手大会は、高校球児にとっての夢舞台である「夏の甲子園」こと全国高等学校野球選手権大会へつながる、岩手県独自の地方予選大会です。毎年夏に開催され、岩手県内の高校硬式野球部が甲子園出場を目指し、しのぎを削る最大のイベントとなっています。

大会の歩み

岩手県の夏の高校野球予選は、その歴史の中で様々な変遷をたどってきました。大会が始まった当初の大正時代から昭和初期にかけては、東北地方全体の予選である「東北大会」の一部として行われました。その後、昭和初期から中期にかけては「奥羽大会」（現在の東北南部と秋田・山形の一部を含む範囲）、そして昭和中期から後期にかけては「北奥羽大会」（岩手、青森、秋田の一部を含む範囲）といった広域的な地区大会の一部として位置づけられていました。

この間、数回の記念大会では、特例として一県一代表制が導入され、岩手県単独で代表校が選出されることもありました。そして、1973年（第55回大会）からは、岩手県が単独で全国大会の代表校を決定する地方大会として完全に独立し、「全国高等学校野球選手権岩手大会」として現在に至る形式が確立されました。この歴史は、岩手県の高校野球が甲子園への道をどのように切り拓いてきたかを示しています。

大会を彩る球場

大会の熱戦は、県内各地の野球場で繰り広げられます。近年、大会の主会場として中心的な役割を担っているのは、盛岡市にある「きたぎんボールパーク」です。2023年からメイン球場となり、開会式や閉会式、そして多くの主要試合が行われています。また、歴史ある「花巻球場」（花巻市）も、古くから現在まで大会を支える重要な球場の一つです。

かつては長きにわたりメイン会場であった「岩手県営野球場」をはじめ、盛岡市営野球場など、盛岡市内の複数の球場が大会の中心となっていました。さらに、紫波町営球場、雫石球場、森山球場（金ケ崎町）など、県内各地の様々な球場が大会会場として使用されてきました。これらの球場は、それぞれの時代において、数々の名勝負や球児たちの懸命なプレーを見守り、岩手県の夏の高校野球の歴史を築いてきました。

2020年、異例の夏

2020年は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、夏の全国高等学校野球選手権大会および全ての地方大会が中止となるという、前例のない事態となりました。しかし、高校球児たちに最後の夏を経験する機会を与えるため、岩手県高等学校野球連盟の主催により、独自の代替大会「令和2年夏季岩手県高等学校野球大会」が開催されました。

この大会は7月中に実施され、65チームが参加しました。通常のトーナメントとは異なり、7地区31ブロックに分かれて地区予選を行い、勝ち上がった31校による県大会という形式で行われました。選手の安全確保や機会均等を考慮し、ベンチ入りは20人までながら試合ごとの入れ替えが可能、延長13回からタイブレーク適用といった特別ルールが設けられました。観客は大幅に制限され、控え部員とベンチ入り選手1人につき保護者2人までという、関係者のみでの静かな開催となりました。この代替大会で優勝したチームは、東北6県の代替大会優勝校が集まる独自の「東北大会」へ駒を進めました。困難な状況下でも、球児たちに夏の思い出と目標を与えた重要な大会でした。

放送

大会の模様は、県内の放送局によって中継されます。IAT岩手朝日テレビでは、主にメイン球場で行われる試合がテレビで放送されます。また、NHK盛岡放送局では、決勝戦をテレビで、準決勝以降の試合をラジオで中継しており、県民に大会の熱気を伝えています。

全国高等学校野球選手権岩手大会は、多くの球児にとっての目標であり、成長の場です。岩手県の夏の風物詩として、毎年多くの人々がその行方を見守っています。

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