全天自動捜索システム

全天自動捜索システム (ASAS)

全天自動捜索システム（ぜんてんじどうそうさくしすてむ、英語: All Sky Automated Survey: ASAS）は、ポーランド共和国が主導する自動観測プロジェクトです。このシステムの主目的は、地球上の全天にわたる膨大な数の恒星について、その明るさ（光度）を自動的かつ継続的に監視することにあります。具体的には、概ね14等級より明るい約1000万個の恒星が観測対象とされています。

ASASプロジェクトは、1997年4月7日に観測を開始しました。システムの物理的な設置場所は、南米チリにあるラスカンパナス天文台です。遠隔地の天文台に設置されたシステムは、ポーランドのワルシャワ大学に所属するグルゼゴルズ・ポイマンスキー（Grzegorz Pojmański）氏によって、インターネットを介して遠隔管理されています。

このプロジェクトは、プリンストン大学のボフダン・パチンスキ（Bohdan Paczyński）氏の発案に基づいています。システムの中核となるプロトタイプ装置や、観測データを転送するための装置の設計と製作は、グルゼゴルズ・ポイマンスキー氏が担当しました。プロジェクトは1996年に開始され、初期段階では100万米ドルの予算が投じられました。当初は南半球の約100万個の恒星の観測から始まりました。

ASASシステムが変光星の新たな発見に極めて有効であることが実証されると、プロジェクトの規模は拡大されました。現在では、ラスカンパナス天文台に設置された合計4台の望遠鏡が稼働しており、観測範囲も広がっています。特に南天に重点が置かれており、赤緯にしてマイナス28度よりも南、すなわち全天の約4分の3にあたる領域をカバーしています。この観測により、これまでに50,000個を超える変光星が検出されています。

主な観測成果

ASASによる継続的な観測は、天文学の多くの分野に貢献しており、特に突発的な天体現象や変光天体の研究において重要な役割を果たしています。これまでに、以下のような様々な天体がASASによって発見・観測されています。

観測された恒星総数: 約1,500万個
検出された変光星総数: 約 50,000個
新たに発見された変光星数: 約 39,000個

また、恒星以外の天体についても発見実績があります。

彗星:
C/2006 A1 ポイマンスキー彗星 (C/2006 A1 Pojmański)
C/2004 R2 (ASAS)
新星:
Nova SMC = ASAS 011500-7325.6 (自動検出による事前発見)
V1663 Aql = Nova Aql = ASAS 190512+0514.2 (ASASによる発見)
V378 Ser = Nova Ser 2005 = ASAS 174924-1300.0 (ASASによる発見)
V5114 Sgr = Nova Sgr 2004 = ASAS 181932-2836.6 (自動検出による事前発見)
V2574 Oph = Nova Oph 2004 = ASAS 173845-2328.3 (自動検出による事前発見)
V1186 Sco = Nova Sco 2004 = ASAS 171251-3056.6 (ASASによる発見)
V1188 Sco = Nova Sco 2005 = ASAS 174422-3416.5 (ASASによる発見)
矮新星:
ASAS 160048-4846.2 - UGSU in Nor (ASASによる発見)
ASAS 091858-2942.6 - CV in Pyx (ASASによる発見)
ASAS 153616-0839.1 - UGWZ (ASASによる発見)
* ASAS 002511+1217.2 - UGWZ/UGSU ? (ASASによる発見)

このように、ASASは自動観測による効率的なデータ収集と解析を通じて、多数の変光星や突発天体を発見し、現代天文学における大規模サーベイ観測の成功例として知られています。

もう一度検索