全日本フォークジャンボリー

全日本フォークジャンボリー：日本の野外音楽史を彩る伝説のフェス

1969年から1971年にかけて、岐阜県中津川市にある椛の湖畔で開催された『全日本フォークジャンボリー』。日本の音楽シーン、ひいては若者文化史において、極めて重要な位置を占めるイベントとして知られています。中津川フォークジャンボリーとも呼ばれ、日本における野外音楽フェスティバルの先駆けとなったこのイベントは、今日まで続く大規模音楽イベントの礎を築いたと言えるでしょう。

勃興期日本のアンダーグラウンド音楽シーン

当時、日本の音楽シーンは大きな変革期にありました。フォークソングの人気はピークを迎え、同時にロックミュージックが台頭し始めていました。全日本フォークジャンボリーは、こうした時代の空気感を受け止め、フォークシンガーからロックミュージシャン、そして多くのアマチュアミュージシャンたちが一堂に会する、まさに時代の先端をいくイベントでした。アンダーグラウンドやサブカルチャーを代表するミュージシャンたちが集結し、自由で開放的な雰囲気の中で音楽が奏でられました。飛び入り参加も歓迎され、プロアマ問わず、多くのミュージシャンたちがその才能を披露する場となりました。

関西地方では、フォークキャンプコンサートといった自主的なコンサート企画が盛んに行われており、1969年の第4回フォークキャンプでは京都市の円山公園野外音楽堂で打ち上げコンサートが開かれるなど、音楽シーンの活気は既に高まっていました。こうした自主的なムーブメントが、全日本フォークジャンボリーへと結実したと言えるでしょう。

地方興行の新たな地平

当時の地方興行は、主に興行師や興行会社によって運営されるのが一般的でした。しかし、全日本フォークジャンボリーは、一部の音楽事務所やレコード会社が協力する形で、実行委員会によって自主的に企画・運営されました。この点において、従来の興行の枠組みを超えた、新しい試みであったと言えるでしょう。商業主義に染まらない、純粋に音楽を愛する若者たちが全国から集まり、その熱気は想像を絶するものだったと言われています。

ウッドストックに先駆ける野外フェス

1969年8月15日から17日にかけて開催されたアメリカのウッドストック・フェスティバルは、世界的な反響を呼びました。しかし、全日本フォークジャンボリーは、ウッドストックよりも早く開催されており、世界的なムーブメントに先駆ける形で、大規模な野外音楽フェスティバルという形式を日本で確立したと言えるでしょう。

第3回（1971年）の開催時には、20,000人から25,000人の観客を集め、社会現象と言えるほどの盛り上がりを見せました。フォークソングからロックへの音楽シーンの移行、映画『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』の公開、若者の旅行ブーム、アウトドアライフの流行など、1970年前後の社会状況が相まって、この規模の集客を実現したと言えるでしょう。

栄光と終焉：第3回とその後

全日本フォークジャンボリーは、中津川労音事務局長の笠木透氏らによって企画・運営されました。1960年代後半より中津川市などで高石ともや氏らとフォークコンサートを開催する中で、このイベントの構想が生まれたそうです。しかし、商業主義的な要素が強まってきたこと、地元住民との摩擦、運営上のトラブルの増加などが原因で、1971年の第3回を最後に幕を閉じました。特に、第3回では、安田南氏の出演時に観客から激しい野次が飛ぶなど、会場は混乱状態に陥り、イベントの継続は困難となりました。

伝説の継承

全日本フォークジャンボリーの経験は、その後も日本の音楽シーンに大きな影響を与えました。1971年の大阪の春一番コンサートや1973年からの京都市の円山公園野外音楽堂の宵々山コンサートなどは、フォークジャンボリーの経験が活かされたイベントと言えるでしょう。

また、イベントの参加者や関係者、当時の音楽状況を再現しようとする若い世代の人々によって、各地でフォークジャンボリーの名を冠したイベントが開催されています。2005年には、フォークジャンボリーに参加したミュージシャンたちが東京で追悼ライブを行うなど、その記憶は今も色濃く残っています。2009年には、38年ぶりに同じ会場で復活イベントが開催され、2015年にはフォークジャンボリー記念館が開館、2021年には記念碑が建立されるなど、その歴史は様々な形で後世に伝えられています。

開催記録と参加アーティスト

各回の開催日、参加者数、出演アーティストのリストは、資料によって多少の差異が見られますが、ここでは代表的なアーティストを挙げ、イベントの規模感と、その影響力の大きさを示唆いたします。

第1回（1969年）：五つの赤い風船、岡林信康、高石ともや、高田渡など

第2回（1970年）：赤い鳥、はっぴいえんど、岡林信康、高田渡など、多くのミュージシャンが出演

第3回（1971年）：あがた森魚、はっぴいえんど、岡林信康、加川良など、さらに多くのミュージシャンが出演し、大規模なイベントとなりました。

これらの記録は、全日本フォークジャンボリーが、当時の音楽シーンを代表するイベントであったことを如実に示しています。

記録映画と音楽作品

第2回の模様を収録した記録映画『だからここに来た - 全日本フォーク・ジャンボリーの記録』は、DVDとして発売され、当時の熱気を今に伝えています。また、参加アーティストたちの音源もCDとして発売されており、当時の音楽シーンを体感することができます。

全日本フォークジャンボリーは、単なる音楽イベントとしてだけでなく、日本の音楽史、そして若者文化史における重要な転換期を示す象徴的な出来事でした。その功績は、今日まで語り継がれ、未来へと受け継がれていくでしょう。

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