全日空857便ハイジャック事件

全日空857便ハイジャック事件

全日空857便のハイジャック事件は、1995年6月21日に発生しました。この事件は、函館空港に着陸していたボーイング747型機が、中年の男性にハイジャックされ、365名の乗客が人質にされるというものでした。このハイジャックは、日本国内で初めて強行突入によって解決された事件でもあります。

事件の経過

事件は、東京国際空港（羽田）を出発し、函館空港に向かっていた全日空857便が山形県上空でハイジャックされるところから始まりました。犯人は、オウム真理教の信者を名乗り、用意したサリンを使用することをほのめかし、乗員を脅迫しました。当初は、麻原彰晃の釈放と、燃料を補給して羽田に戻るよう要求しました。しかし、その後の交渉では、機体を羽田空港に戻すことをしつこく主張。客室乗務員を通じてのやり取りが行われたため、警察は犯人の真意を探ろうとしましたが、乗客解放や補給は拒否されました。

この間、警察庁は全国の警察を動員し、搭乗名簿の身元照合を行いました。乗客の中には、犯人の動きや服装を隠れて撮影し、警察に情報を提供する者もおり、その証言が事件解決の手がかりとなりました。

人質救出作戦

事件が発生してから約12時間後の6月22日、北海道警察は最高作戦会議を開催し、強行突入の方針を決定しました。この時、道警元本部長の伊達興治をはじめ、複数の関係者が参加し、具体的な突入方法について議論。指示が出た後、突入班は特殊梯子を使用して、機体の各ドアから同時に突入しました。

突入の際、犯人は警察の動きに気づき、機内を逃げ回りましたが、最終的に制圧され逮捕されました。犯人は不適切な精神状態にあり、実際にはオウム真理教とは無関係であり、使用していた爆弾は偽物であることが分かりました。

事件の影響

事件の発生後、当該機の運航会社である全日空は、乗客の安全を考慮して運航体制の見直しや、航空機のセキュリティ強化を進めることとなりました。また、事件がきっかけとなり、警察庁は特殊部隊の正式化を図り、全国に新たに部隊を設置することになりました。

犯罪の手口が従来と異なり、警察の警備体制や航空保安体制が見直される契機となったこの事件は、社会に重大な影響を及ぼしました。同年1996年には、全日本空輸が特に安全についての取り組みを強化すると発表し、その後も国内の航空会社が一斉に対策を講じるようになりました。

この事件はまた、全日空から6000万円の損害賠償を命じられた犯人にとっても大きな代償を伴いました。事件が発生した当該機は、2003年に退役し、現在はその便名が別の国際線に使用されています。

報道と映像

ハイジャック事件は、発生当日から翌日にかけてメディアによって大々的に報道されました。日本の主要テレビ局は連日特別番組を放送し、当時のNHKは生中継で事件の経過を伝え、世界初のハイジャックされた機が空港に着陸する瞬間をテレビで放送しました。報道の中には、事件発生の背景や、警察の対応に関する分析が行われ、多くの国民に衝撃を与えました。

このハイジャック事件は、今でも日本の航空史に残る重要な出来事であり、残された影響は航空業界や治安機関にとって貴重な教訓となりました。

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