全昌寺 (大垣市)

全昌寺：戸田氏ゆかりの歴史と信仰の拠点

岐阜県大垣市船町に位置する全昌寺は、曹洞宗に属する由緒ある寺院です。西美濃三十三霊場第30番札所としても知られ、長い歴史の中で幾多の困難を乗り越え、現在も地域の人々から深く信仰されています。特に、大垣藩主を務めた戸田氏との深い繋がりは、全昌寺の大きな特徴となっています。

創建から現代まで：幾多の苦難と復興

全昌寺の起源は、戸田氏鉄の室、大誓院がその叔父である戸田甚五郎（法名：徳翁全昌）の菩提を弔うために摂津尼崎に建立した寺院に遡ります。その後、戸田氏が大垣藩に移封されたことに伴い、大垣において新たな寺院が創建されました。尼崎の寺院が本院にあたるため、大垣の全昌寺はその後継寺院として位置づけられます。尼崎全昌寺の住職であった照岩文鏡が初代住職となり、大垣鷹匠町に創建されたのち、慶安4年（1651年）に現在の船町へと移転しました。

元禄元年（1688年）には、当時の大垣藩主戸田氏定より50俵の寄進を受け、その後も戸田氏の庇護の下で発展を続けました。しかし、元禄5年（1692年）の大火により全焼するという大きな打撃を受けます。5世住持の単伝清和の尽力により中興を果たしますが、明治24年（1891年）の濃尾地震では再び壊滅的な被害を受けました。明治29年（1896年）、宗謙和尚によって本堂と庫裏が再建されましたが、昭和20年（1945年）の大垣空襲で再び伽藍が焼失。現在の堂宇は、これらの困難を乗り越え、再建されたものです。

文化財と所蔵品：歴史を伝える貴重な遺産

全昌寺には、歴史的価値の高い文化財が数多く残されています。大垣藩士であった小原鉄心の墓と、全昌寺25世住職である鴻雪爪の墓は、大垣市の史跡に指定されています。これらの墓は、寺院の歴史と地域社会との繋がりを示す重要な証となっています。また、兆殿司作と伝わる十六羅漢図も所蔵しており、精緻な筆致と写実的な表現は、見る者の心を捉えます。これらの文化財は、全昌寺の長い歴史と文化を伝える貴重な遺産であり、後世に継承していくべき大切なものです。

資料と参考文献

全昌寺の歴史を紐解く上で、様々な資料が活用されています。岐阜新聞（1999年7月19日、2016年11月17日）、中日新聞（1987年11月4日）、毎日新聞（1973年5月29日）、そして大垣市が発行した『大垣市史』（1930年2月15日）などが、その歴史解明に役立っています。これらの資料は、全昌寺の変遷や地域社会との関わりを詳細に伝える貴重な情報源となっています。

まとめ

全昌寺は、戸田氏との深い繋がり、幾度もの災害からの復興、そして残された貴重な文化財を通して、その歴史的意義を強く示しています。単なる寺院としてだけでなく、地域の歴史と文化を伝える重要な拠点として、これからもその役割を担っていくことでしょう。

もう一度検索