全米警察24時 コップス

『全米警察24時 コップス』は、1989年からFOXで放送を開始し、その後パラマウント・ネットワークなどを経て2020年まで続いた、アメリカを代表する警察密着型のリアリティ番組です。番組のテーマ曲として、インナー・サークルの「バッド・ボーイズ」が使用され、そのキャッチーなメロディは、番組とともに広く親しまれています。

この番組は、日本の民放で放送されている『警察24時』と似た形式でありながら、取材スタイルに大きな違いがあります。『警察24時』が取材クルーがパトカーを追跡する形式であるのに対し、『コップス』ではカメラマンがパトカーに同乗し、警察官の活動を間近で撮影します。指令を受けて現場に急行し、事件の発生から解決までの過程をリアルタイムで伝えることが、この番組の最大の特徴です。BGMやナレーションは一切なく、現場の音と映像のみで構成されるため、視聴者はまるで現場に立ち会っているかのような臨場感を味わうことができます。

番組の構成は、まず冒頭に未成年者への注意喚起が入り、その後、ダイジェスト映像が「バッド・ボーイズ」の音楽とともに流れます。本編では、取材した警察官のコメントから始まることが多く、パトロールや事件現場への対応など、警察官の日常が描かれます。画面左隅には、警察官の氏名、階級、所属、場所、事件の種類が表示され、視聴者は事件の状況を警察官の会話や行動から推測することができます。

『コップス』は、リアリティを追求する一方で、犯罪者の姿や放送禁止用語がそのまま放送されることもあり、暴力的な場面も含まれます。その点が、日本では演出や編集が加えられることの多い警察密着番組との大きな違いです。しかし、そのドキュメンタリーとしてのリアルさが、多くの視聴者を魅了し、長年にわたり愛される理由の一つとなっています。

2014年には、ネブラスカ州オマハで起きた強盗事件の現場で、番組の音声技術者が警官の発砲によって死亡するという悲しい事故が起きました。この事故は、現場の危険性と番組制作の難しさを改めて浮き彫りにしました。また、2020年には、ジョージ・フロイド氏の死を巡るデモが激化したことを受けて一時放送が中止となりましたが、その後、新たなエピソードの制作が進められていると報道されました。

『コップス』の影響は、テレビ番組だけでなく、映画やゲームなど、様々なジャンルにも及んでいます。例えば、映画「セブン」では、肩越しに後部座席を映すカメラアングルが、この番組の撮影技法を参考にしたと言われています。また、映画「バッドボーイズ」シリーズでは、テーマ曲が劇中で使用され、コメディドラマ「Xファイル」では、この番組のパロディエピソードが制作されました。

さらに、マイケル・ムーア監督は、自作品「ボウリング・フォー・コロンバイン」で、企業犯罪を摘発する「企業コップス」というパロディを披露しました。これらの例からもわかるように、『コップス』は、単なる警察密着ドキュメンタリー番組としてだけでなく、アメリカのポップカルチャーの一部として広く認識されています。また、番組テーマ曲の「バッド・ボーイズ」も、アメリカでは警察のテーマ曲として定着し、パトカーのおもちゃにもこの曲を模したメロディーが使用されるほどです。

このように、『コップス』は、そのリアルな映像と、時に衝撃的な内容で、視聴者を魅了し続けているだけでなく、多くの作品に影響を与え、アメリカの文化に深く根付いた番組と言えるでしょう。番組で使われている「バッド・ボーイズ」も、また然りです。番組は、FOX SPORTS ENTERTAINMENTで放送中です。

もう一度検索