八五郎坊主

八五郎坊主（はちごろうぼうず）

『八五郎坊主』は上方落語の代表的な演目で、八五郎というキャラクターが登場します。この演目では、八五郎が出家を考えるきっかけとなる人とのやり取りが描かれています。

あらすじ

物語は八五郎が友人の甚兵衛に、「つまらない奴は坊主になれ」という言葉の意味を尋ねるところから始まります。甚兵衛は、何もしない人が社会に存在しても役に立たないので、思い切って出家すべきだと説明します。八五郎は自身の状況、仕事もなく家族もいないことを考え、「それなら出家しよう」と決意します。

彼は甚兵衛からの紹介状を持って、下寺町にあるズクネン寺へ行くことになります。そこで彼は住持にいくつかの頓珍漢な発言をし、住持を困らせます。しかし、住持は八五郎を興味深い人物だと評価し、彼の出家を許可します。八五郎は住持から出家の心得を教わり、頭を剃って「法春」という名を与えられます。

ところが、八五郎はすぐにその名を忘れてしまいます。住持は彼を叱りつつも、「釈尊の弟子周利槃特は名を忘れたが、悟りを得た」と励まし、法春の名前を書いた紙を渡します。それを持って、彼は甚兵衛に挨拶に行くと告げます。

八五郎は友人たちと出会い、自身の出家の話をしますが、すぐに与えられた名前を忘れてしまいます。友人たちは彼の名を尋ね、面白おかしいやり取りが続きます。「ホウ」という字と「春」の部分が混乱し、八五郎は様々な失敗をしながらも名前を思い出そうと奮闘します。「ノリカス」や「ホウシュン」といった間違った名前のやり取りが笑いを誘います。

最終的には、名を忘れた八五郎が出家名を思い出す場面で笑いが生まれます。このオチは、八五郎の単純さや情けない性格を表現しています。

概説

『八五郎坊主』には、東京落語の「八っつぁん」と同じキャラクターが登場しますが、上方での「八五郎坊主」という演目は独特です。落語の中では、キャラクターの喜六の要素が見受けられます。

古典的なオチでは、八五郎が名を覚えられず、周囲からのいじりや笑いが生まれます。また、2代目桂枝雀の演出は特に人気が高く、独創的なクスグリが盛り込まれました。

出家のシーンは、八五郎が頭を剃って外へ出た際の独り言や、季節ごとの描写に工夫が加えられ、各演者のスタイルによって異なります。

舞台設定

「八五郎坊主」の舞台は、大阪市天王寺区西部、下寺町にある寺院群が背景になっています。この地域は歴史的な魅力があり、落語の中で言及されることで、上方の文化や風景を感じさせます。秋や春の季節感を強調した描写が、演者によって様々に表現されることも特徴の一つです。

このように『八五郎坊主』は、単なる喜劇としてだけでなく、深い人間関係や文化的背景が盛り込まれた落語の演目として親しまれています。

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