八十日間世界一周

『八十日間世界一周』

『八十日間世界一周』（Le Tour du Monde en Quatre-Vingt Jours）は、1873年に出版されたジュール・ヴェルヌの冒険小説です。物語は、イギリスの資産家フィリアス・フォッグが、執事のジャン・パスパルトゥーとともに、80日間で世界を一周するという試みに挑む様子を描いています。この小説は、出発前から旅の行程が精密に計画され、交通手段の変化や国々の文化を背景に、フォッグとパスパルトゥーが直面する数々の困難が展開される形式をとっています。挿絵はアルフォンス・ド・ヌヴィルとレオン・ベネットによるもので、ビジュアル面からも物語の世界観を楽しむことができます。

物語は1872年のロンドンに始まり、フィリアス・フォッグという不思議な紳士が、リフォーム・クラブでの賭けをきっかけに冒険の旅に出ることになります。フォッグは非常に正確な時間の感覚を持ち、世間からは謎に包まれた存在であり、自身の資産家である理由もよく分からない男です。彼が賭け金として2万ポンドを用意し、80日間で世界一周するという提案をした瞬間、彼の冒険は始まります。

旅の途中、フォッグと連れのパスパルトゥーは様々な国を巡り、多彩な登場人物と出会います。インドでは、サティーの儀式に捕らえられそうになっている未亡人アウダを救うために奔走し、香港では再びフィックスという刑事に睨まれながらも逃げる展開が続きます。このフィックスは、フォッグが盗みを働いた疑いを持ち、彼を追いつめようとする重要なキャラクターです。

また、旅の中でフィックスとパスパルトゥーが互いに思い合い、フォッグの命を救おうとする様子は、この物語に感動を与える要素でもあります。フォッグたちは日本へ向かう際に、思わぬトラブルに巻き込まれたり、アメリカ大陸横断の鉄道でのインディアン襲撃に遭遇したり、旅は波乱に満ちています。

旅が進むにつれて、フォッグは自らの意志とは裏腹に仲間を増やし、アウダとの絆を深めていきます。彼らはただの旅行者から運命を共にする仲間へと展開し、最後にはアウダに対する強い愛情を抱くことになります。

物語は、旅の終わり近くにても起伏を迎え、帰国した途端に逮捕されるというピンチに直面するフォッグですが、最終的には思いもよらぬ展開に結びつきます。彼は日付変更線を意識せず、ロンドンへの到着が遅れることで賭けに負けたように思われたものの、実は時間の計算を誤り、一日余裕を持って成功を果たすことができました。この結末は、この旅が「成功である以上、何かを得られた」とする示唆を与えています。

この小説は、不可能を可能にする冒険と人間ドラマを見事に描いており、世界中の人々に愛されている古典文学として位置づけられています。現代に至るまで、数多くの映画や舞台、アニメなどで影響を与え続けている点でも、その重要性と魅力が伺えます。著者ヴェルヌの想像力と豊かな冒険心は、世代を越えて感動を与え、多くの読者に夢を与え続けています。

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