八巻孝夫

八巻孝夫：日本の城郭研究を牽引する情熱家

八巻孝夫氏は、1948年埼玉県蕨市に生まれ、早稲田大学法学部を卒業後、小学館の編集者を経て、現在は城郭研究者、郷土史家として活躍しています。特に中世城郭研究会では、その創立期から中心人物として、個性的な会員たちをまとめ、実質的な代表として会を運営しています。彼の行動力と情熱は、日本の城郭研究の発展に大きく貢献しています。

中世城郭研究会での活動

1971年に創立された中世城郭研究会において、八巻氏は1974年の初参加以来、その運営を支え続けています。会長を置かない同会において、実質的な代表として、会員たちの意見をまとめ、研究活動を牽引しています。また、1987年創刊の会誌『中世城郭研究』の編集長を担い、その詳細な指示のもと、毎年発行を続けています。

全国城郭研究者セミナーの開催

1981年頃、八巻氏は全国で初めて城郭研究者たちが発表し合う場として、全国城郭研究者セミナーを企画しました。1984年に第1回が開催されて以来、年1回開催され、2019年には第36回を数え、247名の参加者を集めました。このセミナーは、研究者たちが交流し、知見を共有する貴重な場となっています。八巻氏は、このセミナーの理念を2003年の第20回開催時に壇上で発表しています。

倭城研究への貢献

1975年には、中世城郭研究会のメンバーとして「倭城址研究会」を設立し、韓国の釜山周辺に点在する倭城の調査を始めました。1979年には、その成果をまとめた『倭城 I』を発行し、倭城研究の先駆けとなりました。20以上の倭城を調査したその研究は、後の倭城研究に大きな影響を与えました。

編集者としての実績

小学館の編集長時代には、『日本名城百選』を企画・編集しました。この企画を通して、城を単なる天守だけでなく、堀、土塁、石垣、櫓などを含む総合的な軍事施設として捉え、その魅力を広く伝えようとしました。この視点は、現在の城郭研究にも大きな影響を与えています。

城郭保存への提言

八巻氏は、城郭の保存にも強い関心を持ち、1991年の築城ブームを批判しました。「中世の城郭は砦のようなもので、白壁の天守閣は存在しない」とし、近世様式の天守閣を持つ城の建設を強く批判しました。また、城の遺構が破壊されている現状に警鐘を鳴らし、遺構と自然の保護の重要性を訴えました。

講演活動と見学会の実施

1991年頃から、八巻氏は中世の城の見学会を企画し、2015年に中世城郭研究会の「城郭見学会」として実現しました。また、教育委員会などの要請に応じ、講演会の講師や見学会の解説員も務め、城郭研究の普及にも尽力しています。彼の講演は、城郭の歴史や構造を分かりやすく解説し、多くの人に城郭の魅力を伝えています。

著書・論文

八巻氏は、『図説中世城郭事典』や『鷲城・祇園城・中久喜城』などの著書を執筆し、中世城郭に関する貴重な資料を提供しています。また、会誌『中世城郭研究』には、毎号少なくとも1篇の論文を寄稿し、研究の最前線を伝えています。さらに、倭城址研究会編『倭城 I』や、本田昇著『全国城郭縄張図集成』などの編集も手掛け、幅広い分野で貢献しています。

その他の活動

八巻氏は、1989年に鷲城跡の保存を進める会主催の歴史探訪で、祇園城と鷲城を案内し、1993年には小山市中央公民館で中久喜城の保存に関する講演を行いました。1999年には、都城市教育委員会の見学会で都之城跡の解説を担当し、都城歴史資料館の特別企画展では史跡巡りの解説も担当するなど、精力的に活動しています。

八巻孝夫氏は、中世城郭研究の第一人者として、研究活動だけでなく、教育活動や城郭の保存活動にも積極的に取り組んでいます。その情熱と行動力は、日本の城郭研究をさらに発展させていくでしょう。

もう一度検索