八木久美子

八木久美子：近現代イスラーム研究の第一人者

八木久美子氏は、近現代のアラブ世界におけるイスラームを専門とする日本の著名な宗教学者です。名古屋外国語大学教授、東京外国語大学名誉教授として長年教育・研究に携わり、日本宗教学会常務理事や日本学術会議連携会員などの要職も歴任。カトリック信徒である八木氏は、非イスラームの立場からイスラーム世界を客観的に研究することで知られています。

研究テーマとアプローチ

八木氏の研究は、アラブ世界、特にエジプト社会に焦点を当てています。その研究対象として、最も難解で複雑なイスラーム世界を選んだ理由について、氏は「一番難しいものを理解できれば、世界を少しは理解できると思った」と述べています。徹底的な研究を通して、かえって「自分が日本を一番理解していなかった」と気づかされた経験も、氏の研究姿勢を象徴するエピソードと言えるでしょう。

主な研究テーマは、近現代イスラームにおけるグローバリゼーションの影響です。特に、エジプトの「俗人」説教師と呼ばれる人々の活動や、グローバリゼーションとムスリム社会の関係性について、独自の視点から多角的に分析を行っています。また、エジプトのノーベル文学賞受賞作家、ナギーブ・マフフーズの作品を通して、イスラーム文化と文学の関係性を探る研究も展開しています。2006年に出版された『マフフーズ・文学・イスラム：エジプト知性の閃き』は、ハーバード大学に提出した学位論文を大幅に加筆修正したものであり、その質の高さが評価されています。

豊富な研究業績

八木氏は、数々の論文を発表し、また多くの著書を出版しています。代表的な著書として、『神の嘉する結婚ーイスラムの規範と現代社会』『慈悲深き神の食卓―イスラムを「食」から見る』（辻静雄食文化賞受賞）、『グローバル化とイスラム――エジプトの「俗人」説教師たち』などがあります。これらの著作は、イスラーム文化を多角的に理解する上で貴重な知見を提供しています。さらに、共著や編著書にも積極的に参加し、イスラーム研究の分野に多大な貢献を果たしています。

学歴と職歴

八木氏の輝かしい経歴は、その学識の高さを示しています。

学歴: 東京外国語大学卒業、東京大学大学院人文科学研究科宗教学専攻修士課程修了、ハーバード大学よりPh.D.取得
職歴: 東京外国語大学助手、助教授、教授などを経て、現在、名古屋外国語大学教授

まとめ

八木久美子氏の研究は、イスラーム世界を理解する上で重要な視点を提供しています。非イスラームの立場からイスラーム世界を研究する姿勢、そして、グローバリゼーションという現代的な視点を取り入れながら、多様なアプローチを用いる研究方法が、氏の大きな特徴です。今後も、その研究活動から目が離せません。

主要著書一覧

『神の嘉する結婚ーイスラムの規範と現代社会』(東京外国語大学出版会、2020年)
『慈悲深き神の食卓―イスラムを「食」から見る』(東京外国語大学出版会、2015年)
『グローバル化とイスラム――エジプトの「俗人」説教師たち』(世界思想社、2011年)
『マフフーズ・文学・イスラム：エジプト知性の閃き』(第三書館、2006年)
『イスラーム文化事典』(共編著者、丸善、2023年)

主要論文

「イスラムの「俗人」スター説教師」『東京外国語大学論集』第77巻、2008年

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