八田一朗

八田 一朗（はった いちろう）

八田一朗は、1906年6月3日に広島県安芸郡江田島町（現江田島市）で生まれた、日本の著名なレスリング選手、指導者、政治家である。彼は日本レスリング界の父として知られ、参議院議員としても1期を務めた。特に彼は、1964年の東京オリンピックに向け大きな尽力を果たした。

来歴・人物

幼少期は父親の仕事の関係で江田島や呉、佐世保で過ごし、神奈川県の小学校に転校後、旧制開成中学校から旧制海城中学校、さらに早稲田第一高等学院へと進学。最終的に1932年に早稲田大学政治経済学部を卒業した。大学在学中、彼は柔道部に所属していたが、1929年のアメリカ遠征でレスリングに敗北したことがきっかけとなり、1931年にレスリング部を創設することに至った。これは日本レスリングの始まりとして現在まで語り継がれている。

その後、八田は「大日本アマチュアレスリング協会」を創立し、やがてロサンゼルスオリンピックに挑むも、当時の日本レスリングは柔道の亜流との見方が強く、困難な時期を過ごすこととなった。彼は単身アメリカに渡り、レスリング修行に励んだのち、帰国して日本レスリングの基礎を固めるために尽力した。

日本レスリングの発展

戦後、八田は日本レスリング協会の第3代会長に就任し、約40年間にわたりその職にあり続けた。彼の指導の下、日本は国際的なレスリングの舞台でも評価されるようになり、1949年には国際大会への参加が認められた。特に1950年には日米対抗試合が行われ、日本のレスリングは急速に進化した。

だが試練も多く、1953年には八田を中心とした早稲田OBによる支配に反発する動きがあったものの、その後は彼の主義のもと、レスリング界は安定へと向かった。彼自身は主義を貫く姿勢であり、時には息子とも衝突したことがあったという。

世界舞台での成果も顕著で、1964年の東京オリンピックでは日本が金メダルを重ね、多くの選手を国際大会へ派遣するなど、国際交流へも積極的に取り組んだ。さらに、八田の影響で国技としてレスリングを捉える国が増えたことも記憶に残る。

政治活動と多岐にわたる影響

加えて、八田は1965年に自民党から参議院議員に当選し、スポーツ議員第一号となる。彼の政治活動はレスリングの普及に寄与し、文部省に対しレスリングを高校の正課に導入させる圧力をかけるなど、強い信念を持って取り組んだ。

また、彼は俳句も愛し、しばしばその詩情を活かされた。八田イズムとも呼ばれる厳しい指導法は後の選手たちに多大な影響を与えた。スパルタ式の訓練から彼の教育方針がどれほど厳格であったかは、記録として残っている。選手に対する健康管理の徹底や、時には過激とも言える指導法は、日本レスリング界において議論を呼ぶこともあった。

晩年と功績

八田は1983年に76歳で死去するまで、様々な団体の設立に関与し、スポーツ振興に寄与した業績は数多く、後進に多くの教えを残した。彼の名を冠した像が日本体育大学レスリング部合宿所に建立され、その功績は後世に語り継がれている。彼の教え子たちも、現代においてもその教えを受け継いでおり、レスリングの発展に力を注いでいる。全体として、八田一朗は日本レスリング界の礎となり、その影響は今なお続いている。

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