八甲田山 (映画)

映画『八甲田山』

『八甲田山』（はっこうださん）は、新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』を原作とした日本の映画で、1977年に公開されました。本作は、極寒の八甲田山を舞台に、実際の軍隊による雪中行軍の悲劇を描いています。この映画は監督・森谷司郎、主演に高倉健、北大路欣也を迎え、音楽は芥川也寸志が手掛けました。特に彼の音楽は1978年の日本アカデミー賞音楽賞を受賞するなど、映画における重要な要素となっています。

あらすじとテーマ

物語は1902年、青森に駐屯する歩兵第5連隊が雪中行軍演習中に実際に遭難した事件を元にしています。この事件では、210名の隊員のうち199名が命を落としました。映画は、軍の上層部からの命令という圧力、仲間との絆、精神的・肉体的限界を越えた苦闘など、極限状態における人間の姿を問いかけるものです。

演習に参加する部隊は、寒冷地訓練の重要性を認識しておらず、極寒の環境に対する過信や準備不足が、悲劇的な結果を招くことになります。高倉健が演じる徳島大尉は、この行軍の指揮を取り、多くの困難に直面します。一方、北大路欣也が演じる神田大尉は、直面する苦境の中でも隊の士気を振り立てようと奮闘します。特に「天は我々を見放した」というセリフは、この映画が当時の流行語にもなり、広く知られるようになりました。

製作と背景

映画は、橋本プロダクションと東宝映画によって製作され、撮影は八甲田山の厳しい冬環境で行われました。そのため、撮影は実際に零下20度を下回る中で行われ、出演者やスタッフにとって非常に過酷なものでした。高倉健はこの映画のためにマンションを手放し、役作りに没頭したと言われています。また、主演俳優たちが演じる部隊員たちは、実際の雪に覆われた環境で身体を酷使し、現実の遭難者に寄り添うような思いで演技に臨みました。

興行成績と評価

この映画は公開後、配給収入が25億900万円を超え、1977年の日本映画の中でトップとなりました。多くの観客が、極限状態での人間の姿とその中で見出す勇気や友情に感銘を受けました。本作は、日本映画史においても重要な位置を占めており、以降の作品にも影響を与えました。

結論

『八甲田山』は、単なる戦争映画に留まらず、人間の意志と絆、そして無謀な計画が招く悲劇を力強く描いた作品です。その音楽、演技、映像すべてが結実し、観るものに深い感動を伝えています。映画の最後には、生還した村山伍長が杖をつきながら八甲田の風景を静かに眺める姿が描かれ、未来の影を感じさせながら映画は終了します。

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