八試大型飛行艇

八試大型飛行艇について

八試大型飛行艇（はちしおおがたひこうてい）は、1930年代に大日本帝国海軍の指示のもとで川西航空機によって開発が進められた飛行艇の一種です。この機体は、実際に製作されることはありませんでしたが、航空技術の基礎的なノウハウを習得するための重要なプロジェクトとして位置づけられていました。川西社内では「KR-1」と呼ばれ、特に略符号は存在しませんでした。

開発の経緯

八試大型飛行艇の開発は、1933年の3月17日に始まりました。海軍が川西に対して指示を出した背景には、大型飛行艇の国産化が求められており、そのために必要な技術的な基盤を整えることが重要視されていたからです。実際には、設計図とモックアップの作成が求められただけで、最初から実機の製作は想定されていませんでした。これに基づき、川西は同年内の3月から12月にかけて、社内名称「Q型飛行艇」と「R型飛行艇」の2つのモデル案を考案しました。

モデル案の特徴

この2つのモデルは、いずれも1,500 hp級の水冷エンジンを搭載した単葉式の大型飛行艇であったという共通点がありました。主翼は艇体の上部に直接取り付けられ、エンジンはその上に設置された架台を介して搭載されていました。Q型の特徴としては、エンジンを2基ずつ串型に配置し、合計で4発のエンジンを持つ機体であったのに対し、R型の方は3発エンジンを搭載していました。この2モデルの間には、エンジンの数とその搭載方式に関して大きな違いが存在しました。

研究の進展と中止

川西航空機は、研究を進めるにあたり、計算結果と模型を用いた実験研究を融合させるアプローチを取っていました。具体的には、風洞試験、水槽試験、フラッター試験、構造研究など広範にわたる試験が計画されていました。しかし、後に九試大型飛行艇の開発が内示されたことを受け、実際の工事に着手することなく八試大型飛行艇の開発は中止されることになりました。この時点において、Q型とR型のいずれが採用されるかはまだ決定されていませんでした。

影響とその後の展開

八試大型飛行艇での研究成果は、後続の九試大型飛行艇の設計に活かされる形となりました。このように、八試大型飛行艇のプロジェクトは実機にはならなかったものの、日本の航空技術の発展に寄与した重要な歩みの一部として位置づけられています。歴史の中で、このような試みがどのように技術革新に結びついていったのかを考えることは、航空機開発の理解を深める上で非常に有意義です。

参考文献

• - 秋本実『巨人機物語 知られざる日本の空中要塞』光人社、2002年
• - 野沢正『日本航空機総集 川西・広廠篇』出版協同社、1959年

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