公文書等の管理に関する法律とは？意味をやさしく解説

公文書等の管理に関する法律について

公文書等の管理に関する法律（以下、公文書管理法）は、日本の行政機関（府、省、庁など）や独立行政法人における公文書の管理方法を定めた法律です。2009年 7月1日に公布され、2011年4月1日に施行されました。この法律は、公文書を「国や独立行政法人などの活動記録であり、民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけ、国民主権の理念に基づき、行政文書の適切な管理、歴史的な公文書の適切な保存と利用を図ることを目的としています。

法律の目的と概要

公文書管理法の目的は、行政文書の適正な管理、歴史的公文書の適切な保存と利用を通じて、行政が適正かつ効率的に運営されるようにすることです。この法律では、公文書の作成、保存に関する各省庁共通の規則が定められており、各行政機関の長は毎年度、内閣総理大臣に管理状況を報告し、その内容は公表されます。また、歴史的に重要な公文書は国立公文書館に保存され、行政文書管理規則の制定や変更などの重要な行為については、公文書管理委員会への諮問が義務付けられています。公文書には外交文書も含まれます。

成立の背景

公文書管理法が制定される以前は、情報公開請求に対して、文書が存在しないことを理由に不開示となる事例や、文書の誤破棄、未作成、不適切な管理などが問題視されていました。特に、2007年には海上自衛隊の補給艦「とわだ」の航泊日誌が誤って破棄されたり、装備審査会議の議事録が作成されていなかったりといった事例が発覚し、公文書管理のずさんさが浮き彫りになりました。

また、民間団体からも情報公開法の制定以来、十分な公文書管理を求める声が強くありました。民主党のプロジェクトチームは、情報公開法の利用者からのヒアリングを通して、現状の問題点を強く認識しました。

こうした経緯から、2003年に内閣府に研究会が設置され、公文書の適切な管理と利用について検討が始まりました。その後、有識者会議を経て法制化が進められ、2009年に公文書管理法が成立しました。

行政文書管理のガイドライン

公文書管理法の実務上の注意点を示すものとして、「行政文書の管理に関するガイドライン」があります。このガイドラインは、2016年の公文書管理委員会による検討を経て、2017年に改正されました。

制定後の問題点

公文書管理法が制定された後も、公文書の管理を巡る問題がいくつか発生しています。

東日本大震災における議事録未作成問題

2012年には、東日本大震災に関する政府の会議において、多くの組織で議事録が作成されていなかったことが発覚しました。野田内閣は、この事実を公表し、議事録の重要性を訴えました。

自衛隊イラク派遣の日報問題

自衛隊のイラク派遣に関する日報の存在が問題となり、防衛省が当初は「見つからない」としていた日報が後に発見されました。この問題は、公文書管理法の改正議論を加速させるきっかけとなりました。

森友学園問題における文書改ざん

森友学園への国有地売却問題では、財務省が政治家関係者の記載を改ざんしたことが発覚し、公文書の改ざんに対する監視体制強化のため、内閣府に公文書監察室が設置されました。公文書監察室は、公文書管理法に基づき、行政機関への報告・資料の徴収、実地調査、勧告などの事務を担います。

桜を見る会招待者名簿問題

内閣総理大臣主催の「桜を見る会」の招待者名簿について、保存期間が過ぎた後の取り扱いを定めた「管理簿」や廃棄した場合に記載する「廃棄簿」に記載されておらず、公文書管理法に違反する取り扱いがあったことが判明しました。

まとめ

公文書管理法は、行政の透明性を確保し、国民の知る権利を保障するために重要な法律です。しかし、その運用においては、文書の改ざんや不適切な管理など、多くの課題が残されています。今後も、公文書の適切な管理と情報公開の徹底が求められます。

公文書等の管理に関する法律